
大掃除の分担が決まって真っ青。なんと1階の湯沸かし室の担当だったのだ。
ここには冷蔵庫があって、こいつがえらく旧式なもので冷凍庫に霜がつく。これを取るには、年に2回の大掃除の時に電源を切って、その上お湯なんかもかけて溶かすしかないのだが、それをうちの偉いさんが大好きなんですよねぇ。始まると、こっちはそばにつきっきりで、溶ける氷を洗面器に受けては捨てに行ったり、タオルでふいてはしぼったりと、甲斐甲斐しく手伝わなくてはいけないのです。そんな騒ぎの中で、どうして「お先に失礼しま〜す」なんて言えましょうか。ボーナスは出ちゃったばかりだからいいとして、来年の昇給に響くかもしれ ない。
まあ、でも、案ずるより産むがやすし。タイムリミットの4時半には氷もあらかた溶け、偉いさんもさすがに飽きて、いなくなっていました。 同僚に「すまないねえ」と謝り、「おみやげ待ってるからね!」の声に送られながら、大急ぎで上野駅に向かいます。荷物はけさ早く上野に行って、コインロッカーに預けてあったので、身軽なもんです。スカイライナーの前売券も買っておいたので、約束の7時前には成田に着き ました。
ところが、ところが、ところが、Wが来ない!
彼女はきょう仕事もなかったはずなのに、なにかあったのかしら・・・。9時発の便のチェックインは何時までなんだろう? もし、このまま来なかったら、ひとりでパリに行くことになるのかしら。ホテルも予約していないし、フランス語は高校時代に2年間勉強しただけ。
え〜ん、怖いよお。でも、19万円を捨てるのはもっといやだし・・・
友情、お金に対する執着、未知への恐怖・・・さまざまな思いに揺れながら待った時間の長く、それでいて短かったこと。結局Wは、9時近くなって到着しました。私も乗ったスカイライナーが満員で乗れず、京成の急行で来たのです。大急ぎでチェックインをすませ(当然ラストでした)、すぐに搭乗。
なにしろ最後に乗ったので、狭いうえにも狭い部分の席でした。私は3人掛けの真ん中。左隣りはアメリカ人のおじさんです。このおじさん、きちんとスーツを着たビジネスマンなのだが、なぜか蛍光色に光るブレスレットをしている。変だけど、見ないふりをしよう、と思ったのにも関わらず、目がついそっちにいってたらしく、おじさんから話しかけられてしまった。日本の会社に勤めていて、福岡に住んでいるそうで、日本語が上手。暗いところで光る性質をもった素材を使って、おもちゃやアクセサリーを作って売っているらしい。ブレスレットも、自社製品のデモンストレーションだったわけ。な〜んだ。私もイヤリングを1個いただいてしまいました。
期待していたとおり、エールフランスの食事はおいしかった。
東京〜アンカレジ(夕食)
鴨肉のパイ 牛ヒレ肉のマデラソース いんげんのソテー添え サラダ チーズ 桃のボルドレーズ コーヒー
ワインもおいしいし、なんとシャンパンまで注文できるのだ!(今はどうだか知りません)アンカレジ〜パリ(朝食)
フルーツジュース 桃のシロップ漬け クロワッサン、デニッシュロール、ロールパン プレーンオムレツ 牛肉の串焼き ジャム、バター チーズ コーヒー が、それにしても身動きできないのは本当につらい。おまけに私の席のリクライニングが倒れない。壊れてるのかと思って、しばらくはそのままにしていたのだけれど、そのうちどうもそうじゃないらしいことがわかってきた。どうやら後ろの席の人(日本人男性)が、私の座席の背が倒れないように足で突っかい棒をしているのだ。え〜、なぜ?なぜ? 私に恨みでもあるのかしら?まさかね。もしかしたら変な人かもしれない、と思うとうかつに注意もできず、しばらくはじ〜っと我慢してしまった気弱な私。そのうち、敵もさすがに足が疲れてきたのか、隣りの席の女性と会話が始まったので気持ちがほぐれたのか、力を抜いてくれました。それにしても、なんだったんだろう? 自分だってかなり疲れるだろうに、あんなにムキになって突っ張るとは・・世の中にはいろんな人がいるものです。
そんなこんなで、さまざまな思いの旅人を乗せたエール・フランス273便は、夜間飛行を続けるのでした。