NEW YORK SKETCHBOOK



FOOD 2

「ねえ、オイスター・バーに牡蠣を食べに行こうよ」
「きょうは大晦日よ。やってないんじゃない?」
「でも、あれってグランドセントラル駅にあるんでしょ?駅ならやってるわよ。日本だって大晦日は電車が終夜営業じゃない」
「あ、そうか」

もちろん、31日は閉まっていた。

すごすごと駅の売店で雑誌を買う私たち。いきなり「東京から?」と、売店のインド人に日本語で聞かれてしまった。それが、なまはんかな日本語じゃない。「すごくじょうずね」とほめると、「上智大学に留学してたんだ。日本には8年いたんだよ」

これしきで牡蠣をあきらめる私たちではない。 Wが友人から、ニューヨークに住む知人に結婚祝を届けるように頼まれていた。こういうのって困るのよねえ。軽いものならいいのだが、たいていは蕎麦とかまんじゅうとか、ずっしりくるものが多いのだ。で、ともかくその知人に電話をして、マンハッタンのどこかで会うことにした。

「オイスター・バーで会わない?」
「そうね、じゃあ、食事が終わる頃、夫に迎えにきてもらって、車で夜景でも見に行きましょう」

オイスター・バーのメニューには、牡蠣が8〜9種類ものっていて、それぞれに大きさ、形、味が違う。1個が95セントから1ドル25セントくらいなので、さんざん迷った揚げ句、3種類くらいを2個ずつとはまぐりを注文した。あと白ワインね。小さいのにすご〜くクセが強くて、まるでチーズみたいなのとか、海の香りがそのまま運ばれてきたようなのとか。どれもとってもおいしくて大満足。

オイスター・バーがあるグランド・セントラル駅には、中2階みたいなところにコーヒーショップがあって、ここも『恋に落ちて』で使われていたとこ。私たちもここでお茶したんだけど、そのときはまだ映画を見ていなくて、帰ってからWと見に行って「ほら、あそこ、行ったね!」「あ、ここも通った」と大喜び。

牡蠣はフルトン・マーケットでも食べたんだっけ。こっちはカジュアルなテイクアウト形式だから、半ダースで4ドルちょっとだったかな。ほかにも、サモサとかピザとかいろんな店があって、食いしん坊の私たちはあっちウロウロ、こっちウロウロとさまよい歩いてしまった。

憧れのベーグルは、ニューヨーク・デリカテッセンで食べた。ユダヤフードが売り物の店で、アール・デコ風の店内がすごくすてき。

しかし、注文したベーグル・サンドが来た時には、絶句した。なにしろパンの大きさが直径15センチくらいあって、はさんであるパストラミの厚さが5センチくらい!(薄切りが何枚も重ねてあってその厚さになってる)あるんだもの。それに山のようなフライドポテトが添えてある。Wが頼んだ「ふつう」のサンドイッチも規模としては同様だった。

あとで考えると、ここは腹ごしらえをしにくる観光客が多いから、このボリュームだったのね。もっとふつうのコーヒーショップみたいなところだと、ベーグルの大きさもノーマルだし、はさんである具もふつうの量だった。日本よりはもちろん多いけど。個人的な好みだが、ベーグルにはやっぱりクリームチーズとスモークサーモンが合うなあ。


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