NEW YORK SKETCHBOOK



TRANSPORT

FK空港に着いたのは夜の8時ごろ。ソウルで4時間、アンカレッジで2時間の待ち時間も含めると、21時間もかかって着いたわけで、もうぼろぼろ。それなのに荷物がなかなか出てこない。ようやく外に出たら9時過ぎていて、もう真っ暗だ。教えられたバス停で待っているのに、バスは全然来ない。

「ねえ、NO STANDINGって書いてあるわよ。ほんとにここがバス停かなあ」(注1)
「う〜ん、立っちゃいけないって言われたってねえ」

なにしろニューヨークだ。暗くなっていて、人も少ない。不安ではちきれそうになって待つこと1時間弱、ようやくバスが来た。ところが、運転手に「J.F.K.エクスプレスの駅に行きますか?」と聞いても、「TRAIN TO PLANE」と答えるだけ。2度聞いても2度とも同じ答えだ。しかたなく、乗ってしまった。

バスは空港内の狭い道をクネクネと進んでいく。暗いからどこをどう通っているのかわからない。「ねえ、これって国内線に乗り継ぐためのバスなんじゃない?」いきなりWがドキッとするようなことを言う。

ようやく小さな建物の前に止まった。降りていく乗客に聞くと、やはりここが地下鉄の駅らしい。あわてて飛び降りる。

そこから西4丁目の駅まではほんとうに安心だった。だって、1車両しかヨなくて、そこに車掌が1人、警官が1人乗ってて、車両内もきれいだったし、途中で止まらないから変な人も乗ってこないし。特別料金をとってるんだから、当たり前と言えば当たり前だけど。

ところが、電車の窓から見える通過駅といったら、どこもほとんど無人。おまけにそこらじゅう落書きだらけで、まさに映画で見た暴力都市ニューヨークそのものなのだ。このあと、あんな所で降ろされて別の線に乗り換えなくちゃいけないのかと思うと、正直言って「来なければよかった」の思いで胸が一杯になってしまった。できることなら、このまま回れ右して日本に帰りたい。Wも同じ気持ちらしく、シ〜ンと黙っている。

さて、西4丁目の駅だ。思っていたよりもたくさんの人がここで降りたのと、プラットフォームにちらほらとだけど人がいたのとで、少し気を取り直した私たち。階段を登って降りて、また登ってと、複雑きわまりない乗り換えもなんとかクリアして、次の電車に乗ることができた。ドキドキドキ。

それにしても臭い!

なんの匂いかと言うと、アンモニア、そう、排泄物の匂いなのだ。巨大なトイレの中を歩いているようなもの。乗り込んだ電車も、とにかく汚い! 外側も内側も落書きだらけ。それも、センスのかけらもない、ただの書きなぐり文字ばかり。ニューヨークだから、キース・ヘリングばりのイラストとかが描かれているのでは、なんて期待した私がおめでたかったのね。

Wがボソッとひとこと。「ゴミが走ってるようなもんだわね」

ようやくグランド駅に着いた。R氏に電話して、駅まで迎えに来てもらったときは、心底うれしかった。

(注1)NO STANDINGというのは、「駐車禁止」のことなんだそう。どうして素直にNO PARKINGと書かないのかね。まぎらわしいったらありゃしない。


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