5. The Voice of Sean Bean
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9月2日
アパートメント・ホテルは気楽だ。シーツやタオルの交換、室内の清掃は原則週に1回(リクエストすれば来てくれる)だから、朝寝していても誰も邪魔しにこないし、出かけるときにも「こんなに散らかしたままじゃみっともない」とか「こんなもの出しっぱなしにしておいたらまずい」なんて心配も不要だ。だらしない私には普通のホテルより向いている。 アパートを出て歩き始めると、事務所の中にマネージャーがいるのが見え、手を振り合った。スーツケースのお礼を言ったほうがいいかなと思ったけれど、明日の朝にしよう。 Willis 通りを Lambton Quay に向かって歩く。途中の左側にスーパーマーケットがあると部屋にあったガイダンスに書いてあったのだが・・・あ、これだ、New World というスーパーで、日本のガイドブックにも Te Papa の近くにあるこのスーパーが紹介されていたっけ。ウェリントンでは唯一無二のスーパーマーケット・チェーンなのかも。閉店時間をチェックすると夜の11時。これは使える。 Lambton Quay を駅に向かって歩いていくと、道路沿いの店のサインにまぎれそうになりながらケーブルカー乗り場の表示がある。それに従って細い路地を左に入るが、突き当たりは険しい階段。こんなところにケーブルカーの駅が? といぶかりながら何気なく右手を見ると、映画館の窓口みたいなチケットウ売場の向こうでおじさんがこっちを見ていた。 |
![]() 若者向きのお洒落な店が集まっている Old Bank Shopping Arcade はその名の通り、古い銀行の建物を利用したショッピングセンターで、店の内部はそれぞれの個性に合わせて改装してあるが、共同スペースは昔のまま。美しい細工の施された床や天井は一見の価値がある。地下1階の奥には地面の中の様子が見えるようにガラスで囲んだ部分と説明板がある。カフェもたくさんあって休憩をとるにはうってつけの場所。 もう一度 Dymocks によって未練がましくグッズ類を眺めてから Civic Square に向かう。ヴィジターセンターの隣にあるインターネット・カフェでヴィゴのサイトを検索し、彼がいつも胸に下げているペンダントの形を確認。マオリが使うシンボルを骨と翡翠で彫ったものなのだが、そのへんの店で売っているのとは微妙に形が違うのだ。どうせなら同じ形のものが欲しかったので、ディスプレイを睨みながら簡単にスケッチする。怪しい日本人だなあ。ついでにメールも確認し(日本語が読めるマシンは1台だけで No.18 がそれ)、1時間分の料金(NZ$4)を払った。 City Gallery Wellington に入り、ニュージーランドの新鋭アーティストたちの作品を鑑賞。広いスペースに物足りないくらい少しの作品をゆったりと展示してあるのが、いかにもニュージーランド的だ。先住民族であるマオリの影響もかなりあるのだろうと思われる、でもオーストラリアのアボリジニほどではない土着の匂いのする新鮮な作品が多い。ロビーに置かれた各種雑誌やパンフレット類も、モダンアートに関連したものが多く、ヴィゴだったらきっとここがお気に入りだったに違いないと想像した。 Civic Square には平日だというのに人がたくさん集まっていて、広場で楽器を演奏している若者の周囲に集まっている。長めの昼休みといったところなのだろうか。 ![]() このまま埠頭沿いにずっと行くと Oriental Parade というカフェなどがたくさんあるお洒落な散歩道につながるのだが、さすがにそこまで行く元気はない。次に来たときの目標にしようっと。 ![]() ![]() ![]() きょうはゆっくり中を見ようと歩き始めた。コンピュータを使ったさまざまな演出効果をとり入れて地球の生成からニュージーランドの成り立ち、文明の発祥などが説明されているのだが、どうも子供向けのような気がする。決して幼稚というわけではないのだが、子供が興味をもつように、学習効果が上がるようにと意図されているようで、大人が見ていると少し鼻についてしまうのだ。ひょっとしたら私だけの問題なのかもしれないが、どうにもこうにも集中できなくなってあきらめた。今回はあまりにも頭の中が「ロード・オブ・ザ・リング」に占められすぎているせいかもしれない。指輪の呪縛か? ![]() Te Papa を出て Taranaki Street を行き、Molly Malones の角を左に入って Courtney Place を Embassy Theatre に向かって歩きながらレストランをチェック。レストラン街とはいっても、元々は中国系がメインのエスニックレストランが集まっていたところらしく、気取った店は見当たらない。どこもこじんまりとした入りやすそうな店ばかりだ。もちろんファストフードの店もたくさんある。 ![]() この通りにはキャストやクルーがひと晩借り切ったという Matterhorn というガーデン・バーもある。狭い路地の奥に壊れて打ち捨てられたようなビルの扉があり、その奥らしいのだが、ちょっと恐ろしくて中まで入っていく勇気がなかった。ヴィジターセンターのサイトでの紹介を見る限りでは、おいしいコーヒーやワインが飲めるところらしいのだが・・・。 ![]() ![]() テレビをつけ、買ってきた本を眺めていたら、ショーン・ビーンの声にそっくりの声が聞こえてきた。びっくりして画面を見たが、ショーンはどこにもいない。Sky Watch で確認すると「Deadlocked」というTV映画らしく、出演俳優は David Caruso と Charles S. Dutton とあった。ショーン似の声の俳優は David Caruso のほうらしい。顔はまったく似ていない。「12人の怒れる男」を焼き直したみたいな法廷サスペンスだったが、見ているとそれなりに面白くて最後まで見てしまった。 見終わると7時になっていた。今夜は最後の夜なのでまともな食事をしたかったから Brava に行くつもりだったのだが、昼間歩きすぎたせいで足が棒のようになっており、また Courtney Place まで歩くのも気がすすまない。しばらく迷っていたが、結局は New World で何か買ってきてここで食べることにする。せっかくキッチンもあるんだしね。 外国のスーパーは楽しい。置いてあるものがすべて、ふだん目にしないようなものだし、その土地の人たちの暮らしぶりが見える。野菜の種類などはそれほど違いはないが、出来合いのサラダ類の数が多いというのは家で料理をする人が少ない、ということなのだろうか。と言いつつ私もレタス、きゅうり、ラディッシュ、パプリカのサラダをバスケットに入れた。それだけじゃ寂しいのでロケットサラダも1袋買う。惣菜コーナーでトマトとツナのラザーニャとベジタリアン向けのポテトとレンズ豆のキッシュを買い、デザートにはカラメル。さらにワイン売場で赤ワインの小ボトルをみつけ、ちょっと買いすぎかなあと思いつつ支払いをすませた。 ![]() ひさしぶりの生野菜サラダはおいしかったが、ついてきたドレッシングが激甘で最低。ラザーニャは例によって塩辛く、キッシュは味がない。ベジタリアン向けということは成人病の心配をしている人向けということでもあって、塩分もカットしてあるのだろうか? まずは満足のいく食事もできたので、洗濯物を干し、明日のための荷造りをした。スーツケースはウェリントンで預けてしまうし、成田でもすぐに宅配にしてしまうつもりなので、不要不急のものだけ入れた。1泊用にもってきたボストンバッグにお土産などをつめこむ。これは機内持ち込みにするつもり。きょう買った絵葉書を友人宛てと自分宛てに書き、Dymocks で買ったロード・オブ・ザ・リング切手を貼った。ただ持っているよりニュージーランドの消印がついているほうがいいじゃない? |