2. A Short Cut to the Middle Earth
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8月30日
今回の旅の2大目的のひとつである The Rover Ring Tour はヴィジターセンターのサイトでみつけた。ウェリントン周辺の映画のロケーションに使われた場所を車で1日かけて回るというもの。昼食付きとはいえ NZ$150 とかなりのお値段。でも、自分でこれだけ回ろうと思ったらレンタカーを運転するかタクシーを利用するしかなく、かえって高くついてしまう。初めはこちらに着いてから申し込むつもりでいたのだが、事前に回る場所を確認しようとメールを出したら、冬場は連日ではなく週に1度土曜日だけだと言われ、あわてて予約を入れた。 約束の時間の5分前にレセプションから「ジェイソンという方がいらしてます」と電話が入り、あわてて降りていく。赤いフリースを着た30台前半くらいの男性が立っていた。挨拶をかわしマイクロバスに乗り込んで、代金を払う。このあといくつかホテルを回って他の客を拾っていくらしい。 次に乗ってきたのは40台前半くらいの夫婦者。アリゾナから来たトニーとブレンダ。今日の早朝ウェリントンに着いたばかりらしい。タフだなあ。ブレンダは自己紹介されるとすぐに「ねえねえ、こっちの人ってちょっと皮膚感覚がおかしいんじゃない? どうしてどこもかしこも店のドアを開けっ放しにしてるの? 冬なのに!」と聞いてきた。思わずわが意を得たりとばかりに「そうなのよね! ホテルの部屋だって異常に寒くて、エアコンのスイッチが暖房なのか冷房なのかわからないし」と私も愚痴ってしまった。暑さも寒さの厳しいアリゾナだったら、暖房も冷房も完璧に効く家に住んでいるのだろうから、ショックを受けるのも当然だ。 次は20代半ばくらいのシアトルから来たカップルでポールとユリ。女性は日系だが日本語は話せないようだ。ハネムーンだというので口々に「おめでとう!」と祝福した。最後に乗ってきたのは60台前半くらいのメキシコから来たという白人男性だった。なんとまあ色々な年代、出身の集まりだこと。さすが指輪の世界は広い。 ジェイソンが「最初に確認しておきたいんですが、皆さんはどういったファンですか? 映画? 原作? 両方? それによって説明の仕方も変わってきますので」 ブレンダ(映画だけ)以外の全員が映画と原作両方をクリアしていた。よしよし。なかなか濃いツアーになりそうだ。 |
「ここが人気になったもので、他に Chocolate Frog Cafe なんてのも出来たんだよ」とジェイソンが言う。「Chocolate Frog じゃハリー・ポッターじゃないか」とファンタジーおたくっぽいポールがすかさず口をはさんだ。そこでひとしきりハリー・ポッターの話。どうやら年配の方々は映画は見たがそれほど感動はせず、本は読んでいないらしい。ポールとユリは本も読んでいた。やっぱり「指輪物語」のほうが幅広い年齢層に受け入れられるんだな。「きのうホテルでコンプリメントだといって Chocolate Fish をくれたんだけど、あれってニュージーランド固有のお菓子なの?」「魚形のマシュマロの回りをチョコでくるんだのでしょう? そうだよ。昔からあるんだ」 次に向かったのは Stone Street Studio や WETA のある Miramar 半島。空港のすぐ近くで、滑走路を飛行機が頻繁に離着陸していた。撮影時に録った音がほとんど使えなかったという話をどこかのサイトで読んだが、その理由のひとつがこの騒音だったそうだ。撮影をするときには飛行機の離着陸をスタッフがチェックして、その合間に行うようにしていたというが、これだけ頻繁に飛んでいるのではさぞかし大変だったことだろう。撮影所は近くの丘の上から見下ろせる位置にあり、そのため丘の登り口には撮影禁止の立て札が。撮影所からこの丘の上を常にセキュリティの担当者が見張っていて、写真を撮っているとすっ飛んできて捕まえるのだという。 それでもめげない人間はどこにでもいるもので、今年の5月に再撮影が行われた際に隠し撮りをした写真が TheOneRingNet に載っていた。ミナス・ティリスのセットらしい。 この撮影のときのエピソード(これとこれ)がイアン・マッケランのオフィシャルサイトに載っていた。バーナード(ヒル)とヴィゴが似ている、という指摘にはちょっとびっくりしたが、そうなのかもしれない。「Viggo wears his beauty so carelessly and deflects flattery with a wry head-on-the-side smile of modesty」という表現は実に的を射ていると思う。 |
もうこれで終わりかな、と思っていると車は別の道路際で止まった。三叉路の横あたりだ。造成中なのか付近にクレーン車が駐めてある小さな丘の近く。一体なんだろう?といぶかしむ私たちにジェイソンがまた写真を見せてくれた。 「ここは Dry Creek Quarry と言って、ミナス・ティリスとヘルム峡谷のセットが作られたところです。ミナス・ティリスのほうは第3部でデネソールが登場するシーンで使われたらしいんだけどね」 ここは坂を途中まで登ってきたような位置にあるのだが、ガードレールから見える坂下の鉄条網に囲まれた草原を指差し、「ここは車の交通も多く、必要最低限の機材しか設置できなかったので、あのあたりにテントやトレーラーを置いて、メイクをすませた俳優を車で送り迎えしていたんだよ」 これでツアーは終わり。車はウェリントン市内へと戻り、「旅の仲間」のプレミアが行われた Embassy Theatre を通った。想像していたよりずっと小さくて地味な劇場だ。現在、12月の第3部プレミアを前に改装中だという。TheOneRingNet に出ていた今年5月の写真では劇場の上部にトロールではなくゴラムが乗っていたのだが、これも外されてしまっていた。残念。 劇場前はT字路になっていて、Tの字の真ん中にあたる Courtney Place という道路がウェリントンではレストラン街として有名だ。劇場の斜め向かいにあたる Courtney Place のいちばん端にはイライジャやリヴがお気に入りだったという Brava というレストランがある。道に面した側がガラス張りで、中には小さな木製テーブルと椅子がぎっしりと置いてあるだけの、レストランというよりは喫茶店といった趣のカジュアルな店だが、若者の溜まり場には向いているのかもしれない。 Courtney Place と劇場前の Kent Terrace の交わるあたりに信号待ちをする歩行者のための小さな島のようなものがあり、ここでPJが挨拶をしている(周囲にイライジャたちが座って)光景がDVDに入っていたと思う。こんななんでもない場所だったんだ! 1日を楽しく過ごした仲間に別れを告げ、参加者はめいめいのホテルで降りていった。とても充実したツアーだった。 ホテルのロビーは正装した若者であふれていた。ドレスやタキシードで精一杯おめかしはしていても、ばか笑いや叫ぶような嬌声でティーンエージャーだとすぐにわかる。高校のダンスパーティでもあったのかもしれない。 ちょうどいい機会なので、ロビーからクラブラウンジに直行できるエレベーターを使うことにした。このエレベーターはクラブスイートの客にだけ使えるよう、カードキーを差し込んで呼ぶ形式になっている。クラブラウンジの入口は一般のエレベータで上がったときには同じカードキーで開けなくては入れないのだが、このエレベーターだとラウンジの中に出ることができる。ここを使っていたキャスト達はほとんどが9階のクラブスイートに宿泊していただろうから、このエレベーターを常用していた確率が高い。道路に面して作られており、スモークガラスを通して外の景色を楽しむこともできる。逆に外からは誰が乗っているのか見えないはずだ。 VIPの気分を味わいつつラウンジに入り、いつでも飲めるように用意されているお茶で冷え切った体を暖める。それほど寒くないとはいえ、ほとんどの時間外にいたのだから、かなり冷えてしまった。ラウンジにはソファセットや大画面のテレビもあり、きっとキャストやクルーがみんなで泊まっていた頃はここがミーティングルームとして大賑わいだったに違いない。その様子を横からこっそり見てみたかったなあ(^.^)。 部屋に戻ると電話の端の赤いランプがチカチカしている。メッセージが入っているということなのだろうが、電話機を見ても Message という文字が見当たらず、どうやったら聞けるのかわからない。仕方がないのでオペレーターに電話し、「すみません。ランプがチカチカしててメッセージがあるみたいなんですけど、どうやって聞けばいいんでしょう?」と聞いてみた。「Voice Mail と書いてあるボタンを押して、あとはインストラクションに従えばいいんですよ」そっか、Voice Mail というがあったな、確かに。 電話は明日泊まる予定の Fernside のビルからだった。予定の変更がないかどうかの確認。電話をして留守電に予定通り9:55の電車で行くと吹き込んだ。 着替えて外に出た。今夜はショーン・ビーンがよく行っていたという Molly Malones というアイリッシュ・パブにした。食事のメニューはそれほど多くないので、おなじみフィッシュ&チップスとギネス。ギネスはアイルランドで飲むのに比べたらもちろんだが、日本で飲めるものよりおいしくなかった。どうしてだろう? 南半球まで運んでくるから? きのうの DB Draught のほうがおいしかったな。ビールはやっぱり地元のがいちばんなのかも。そのかわりフィッシュ&チップスはおいしかった。魚そのものが新鮮で、揚げ方もカリッとしている。味覚に関してはヴィゴよりショーンのほうが信頼できるかも(^.^;)。 ガイドブックには毎晩生演奏があるようなことが書いてあり、店の端のほうに小さなステージがあったので、1回くらいは聴けるかなと期待していたのだが、途中で店の人がステージの上に大きなスクリーンを降ろし、ラグビーの試合(再放送)が始まってしまった。常連らしき男性客たちはそれを見ながら盛り上がり、試合の内容に合わせて叫んだり笑ったりしている。本当に国民的なスポーツなんだなあ。しかし、私にはちっとも面白くない。サッカーよりガタイのガッチリした、どちらかというとおじさんくさい選手ばかりで、見ても楽しくないし。 というわけで食事がすむとさっさと帰った。そうそう、ここもホテルから徒歩3分。Green Parrot とは道路をはさんだ向かいのブロックだ。ヴィゴもショーンも意外に出不精なのかも。 このホテルで過ごす最後の夜なので、備品類をチェック。客間のテーブルの上に置かれていた大判のニュージーランドガイドブックには「ロード・オブ・ザ・リング」の紹介が4ページにわたって載っていた。やはり今ではこの国の大事な観光資源なのよね。そのわりに商売気がないというか、街を歩いていても指輪がらみの宣伝はほとんどみかけない。写真やネーミングの使用に関して、映画会社が厳しいのかな。 さらに、テレビの有線放送 Sky Watch の番組表の冒頭にはイアン・マッケランとクリストファー・リーを比較させた特集記事が見開きで。今月、Sky Movie チャンネルで「旅の仲間」の放映があったためらしい。ちなみに表紙はベッカムだった。 The Rover Ring Tour Jason Bragg Phone 021 426211 www.wellingtonrover.co.nz/rover_rings_tour.htm Molly Malones Cnr Taranaki St & Courtenay Pl, Wellington Phone 04 384 2896 Fax 04 384 2864 |