
帰り道、夜の街をぷらぷらと歩いていると、とてもきれいな建 物がまだ開いているのを発見。なんだろう・・・と入って行ってみたら、あらま、これが中央郵便局なのね。
磨きあげられた床は大理石、黒と金の彫り物がいっぱいの装飾的な壁や階段、アール・ヌーボー風の電灯など、とても郵便局とは思えない美しさだ。手紙を書いたり、切手を貼ったりするためのテーブルも大理石作り。
ほとんどの窓口はしまっているが、多分電報だけは遅くまで扱っているのだろう。私たち以外には、なにやら文面を考えてる風の男性客がひとり、ポツンとテーブルに向かっていた。まるで映画の中の1シーンのように幻想的なひとこまだった。
ホテルに戻り、寝る用意をしていると、
「ねえ、ちょっと、凄いことが書いてあるわよ、これ」とWが呼ぶ。
よくホテルの机の上には、ルームサービスのメニューとか、ホテルの設備のお知らせとか宣伝パンフみたいなものが置いてあるけれど、ここでは「宿泊のお客様へのご注意」という紙が置いてあった。で、そこに書かれていたのは、
ホテル到着の際には、決して見知らぬ人物には荷物を持たせないでください。 貴重品は、ホテルに到着し次第預けてください。 荷物は必ずクローゼットに入れ、鍵をかけてください。 部屋の鍵は必ず閉め、寝るときにはさらに椅子などでドアをガードして万全を期してください。 ひえ〜っ、なにこれ。そんなに物騒なホテルなのかしら、ここって?
そういえば、さっきバスルームに行ったら、なぜかアルカセルツァーとバファリンが置いてあったっけ。ここに泊まると、二日酔いと頭痛で悩む客が多いってことか?
不安におののきながらも、荷物に鍵をかけてクローゼットに入れ、クローゼットの鍵もしっかりしめて、入口の鍵を確認、言われるままに椅子でガードもしてからやっとベッドに入った私たちであった。