
ペセロに乗ってタマヨ美術館に。
『地球』には、タマヨ美術館にはタマヨ自身の作品はほとんどなくて、企画展がメインだと書いてあったので、実はここにはそれほど時間をさく気はなかった。場合によっては行かなくてもいいかな、と思っていたが、きょうは残り時間が中途半端で遠くには行けないし、このあたりがちょうどいい。
チャプルテペック公園の中にあるタマヨ美術館は、とてもモダンで立派な建物だった。オアハカのタマヨ博物館の、こじんまりとしたアットホームな雰囲気を体験していたので、ちょっと意表をつかれた。期待していなかったせいか、意外にタマヨの作品が多いと思う。それも、日本でのタマヨ展では見かけなかった初期の作品や抽象的な作品が多くて、なんのなんの見応えがあるじゃないか。
それにしても、日本でのタマヨ展で展示されていた膨大な作品は、一体どこから来たのだろうか? 世界各地の美術館から少しずつ集めたのじゃ、手数がかかりすぎるし、彼の故郷であるここメキシコにないとなると、ほかにどこにあるというのだ。金持ちのアメリカ人の個人コレクションにでもなっているのかしら・・・?
などとWと話しながら歩いていたら、1階の奥のほう半分が立ち入り禁止になっている。どうやら作品の掛け変えをしているようなのだが、そこを無理矢理覗きこむと、なんと! そこには山のようなタマヨの数々が!
「あ、あれ、日本で見たわ、すごくよかったわよ。あ、あれもだ。なんだ、こんなところにあったんじゃない」
なんのことはない、日本でのタマヨ展開催のためにほとんどの作品が貸出中だったわけね。そりゃあそうよねえ、タマヨ美術館と称していてタマヨのコレクションがないなんてことあり得ないもの。
とりあえず1度は見ている私は、Wに余裕で解説する。憮然とした表情のW、近くに来て作業している学芸員に
「ねえ、見せてもらえません?」
と相変わらず強引に聞く。が、返ってきた答えは当然のことだが、
「マニヤーナ!」
だった。地下のショップに行ったが、ここにもこの美術館のカタログらしきものはない。代わりに(というのも変だけど)、すごく形のいい銀のステゴ サウルスのブローチをみつけてしまい、とりあえず満足した私なのであった。
のちにWは、私が帰国してから再度美術館に足を運び、とうとう残りの作品を目にしたという話である。