
ようやく部屋に落ち着き、Wがメキシコ観光にキューバ行きの件で電話をしている間に、ホテルの中にある観光会社にミトラへのツアーの申し込みに行った。ひとり40ペソ、英語のガイド付き。お金を払うとチケットをくれて、迎えが来るからロビーで待つように言われた。
ロビーにはやはりツアーに参加するらしいアメリカ人のグループ4人が待っていたが、彼らは個人ガイドを雇っての観光らしく、私たちとは別に出かけていった。このホテルから参加するのは、どうやら私たちだけらしく、ガイドに案内されて車まで案内されてみたら、先に乗っている客もいない。6人乗りのバンに運転手とガイド、それに通訳の3人が乗っているので、客より案内人のほうが多い勘定だ。
ティオティワカン・ツアーのときもそうだったけど、運転手、ガイド、通訳って厳密に職域が分かれていて、決してひとりで兼任したりしないのね。
車はまず、トゥーラの樹のところで止まった。街からは意外に近い。ほんとにすごく大きな樹(゚.゚;)!
その樹を囲むように柵が出来ていて、さらにまたその敷地を囲むように塀があって、入場料をとるようになっている。樹のまわりにはスプリンクラーがたくさん設置してあって、絶えず根元に水がかけられるようになっているし、専任の庭師らしきお爺さんがせっせと草むしりやら虫とりやらをしている。日本の子供も真っ青の過保護ぶり。
でも、確かにこの樹はシワシワよぼよぼという感じで、根元のほうなど枯れかけているみたい。このまま放置しておいたら、早晩倒れてしまうだろう。でも、それも寿命だという気もするけどねえ。
さて。ミトラに向かってハイウェイを10分くらい走ったところで、いきなり車がエンコしてしまった。土漠のど真ん中だ。
街の中を走っているときからガタピシ言っていて、「ぼろい車だなあ」と思ってはいたけど、まさか止まってしまうとは! 3人でボンネットを開けて、ああでもない、こうでもないと言っていたが、やがてひとりが土漠の中を歩いていってしまった。
「彼は電話をしに行きました。この車はもう走らないから、乗り換えてもらわなければなりません。もうすぐ、うちの会社の別の車がこの道を通るはずだから、それに乗ってください」
げえ、こんな暑い昼日中、日陰もない土漠の真ん中で、来るかどうかわからない救援を待つなんて、まるで西部劇じゃないかあ! 寝不足で調子の悪いWは、少しでも涼しい車の中でじっとしている。私は、なにか面白い虫でもいないかと、土漠に生えている潅木の茂みを観察にいったけど、ただ暑いだけだった。
10分くらい待ったころ、「あれだ、あれだ!」とガイドたちが騒ぐ声がし、上着を振り回し始めた。そうよ、あの車に見過ごされたら、私たち、ここで干からびていくしかないんだもの。
近づいてきたバスは、思わせぶりに少し行き過ぎてから止まった。私たちのガイドが、バスに乗っていた背の高い男に事情を説明している。彼があっちのバスのガイドらしい。
同じ会社なんだし、向こうの落ち度なのだから、すぐに「それは申し訳ありません。どうぞこちらに移ってください」ってふうになるのがふつうだと思うが、「それで、ガイドはスペイン語でいいの? えっ?英語?(‐_‐)チッ 」って顔をしてから乗せてくれた。なんだかやな感じ。
乗ってみると、バスはけっこう満員で、スペインから来た新婚カップルや、メキシコ人のお金のありそうな家族連れなど、スペイン語を母国語にする客ばかりだった。ガイドは、スペイン語で説明したあと、一応私たちのために英語でも話してくれるのだが、どうもスペイン語のときに比べると短い。
Wは、両方わかるから、スペイン語のほうを通訳してくれるのだけれど、いずれにしてもたいした事は言ってない。