WALKING IN MEXICO



Part 27

ロントの人は、「2ブロックも行けばタクシーが拾えますよ」 と言った。そう言ってるそばから、デモ隊の人間が入ってきて、ホテルからの差し入れらしき段ボール箱をかついで持っていく。中にはビニール袋にくだものやミネラルウォーターを詰めたものがたくさん入っていた。

とにかく行ってみるしかない。荷物をしっかりかつぎ直し、えいっ!とばかりに外に出た。

うわぁっ!

実際に外に出てみると、上から眺めていただけとは大違い、すごい迫力だ。

道幅いっぱいに人、人、人があとからあとからレミングのネズミのように流れてくる。その流れに逆らって歩くのは私たちだけ、という、実にもう孤立した状況で、おまけにみんなお祭り気分になってるから、日本人が荷物をかついで汗ダラダラ流しながら必死に歩いているサマは、いい冗談の種になってしまったみたい。幸い私はなにを言われてもわからないし、もう人をかきわけることにだけ神経を集中させていた。

2ブロック歩いたが人波はなくならない。途中で横道に入ればなんとかなると思ったが、曲がろうとすると向こうの道にも人が詰まっている。 所々に立っている警官にどこまで行けば、車が通っているのかを聞いても、誰もはっきりしたことはわからない。

それでも次第に人の数が減ってきた。車はまだ交通止めらしくて走っていないが、自転車のうしろに2人掛けのシートをつけた人力車がせっせと稼いでいる。

私たちもこれに乗りたかったが、なにしろ唯一の交通手段だから、文字どおりひっぱりだこで、空車なんかみつけられない。結局、30分以上も歩いて、ようやくHIDALGO の地下鉄駅が開いているのを見つけた。もう、タクシーを探しているよりも地下鉄で行ったほうが確実だろうと思い、LA ROSA で乗り換え、TERMINAL AEREAまで行った。

しかし、このLA ROSA での乗り換えがまた、ただごとじゃなかった。最初のうちは、「わあ、駅の構内にプラネタリウムがあるなんて、すてき!」と喜んでいたのだが、歩けども歩けどもホームに行き着かないものだから、次第に無口になっていった私たちであった。おまけにTERMINAL AEREAでは、反対側の出口に出てしまったもので、どっちが空港なのかもわからず、途方にくれてしまい、通り掛かった人に駅まで連れ戻されるありさま。ちゃんとした出口から出れば、なんのことはない、もうすぐそこが空港なんでした。

ああ、疲れたぁ。


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