
8時起床。Wは相変わらず眠れなかった、と文句を言っている。
「隣りのTVがうるさかったわよねえ」
「おまけに夜中に酔っ払いが騒いでいたでしょ?」そう言われてみれば、かすかにそんな気も。ふだん自分が寝てる東京の部屋も、外の道路に面していて、週末の夜なんか酔っ払いが騒いだりすることが多いんだけど、騒ぎ方がほとんど同じなのね。酔っ払いというのは、どこの国に行っても変わらないんだわ。
このホテルは、中庭部分が吹き抜けになっていて、しかもほんとの中庭じゃなくて屋根がついているから、音が外に抜けなくて、すごく響いてしまうのかもしれない。
さっそく上の階のレストランに朝食をとりにいく。さすがに客が多くて、入口のチェックが厳しい。このホテルに泊まっていて、しかも食事をとる客しか入れないらしい。カメラを持って「写真だけ撮らせて」と頼んでる観光客が見事に断わられているのを見て、「ここに泊まっておいてよかった」と喜びを隠せない私たちだった。
ここもビュッフェ式。
*MENU*たまねぎ、ハム、じゃがいものいため煮
タマレス・・・とり肉の間にコリアンダーをはさんだものにとうもろこし粉で作った生地がまぶしてあって、それをバナナの皮で包んで蒸してある。前に東京で食べたタマレスは、もっととうもろこし粉の量が多かったけど、これは朝食用にアレンジしてあるのかしら?
トルティージャのトマト煮・・・すっかりお気に入り
フルーツ・・・マンゴー、パパイヤ、すいか、パイナップル きょうは日射病になろうとなんだろうとテラスで食事だ。幸い日除けのパラソルがあるから、座っている限りはそれほど暑くはない。が、こんな日にじっと座ってごはん食べていられる人なんているだろうか。
すごいっ!
見降ろした広場は一面の人、人、人、人、人、人、人、人、人。
けさは8時くらいからマイクを通した実況放送がうるさかったのだが、この光景を見ればアナウンサー(?)があれほど興奮していたのも納得できる。
広場の中心は空間になっていて、その周囲を警官がびっしりと並んで四角く囲んでいる。その外側がデモ隊の行進路になっていて、さらにその外側、広場の外周を埋めるようにまた警官が並んでいる。警棒は差しているが、銃は持っていない。
宮殿の前あたりに隊列を組んでいるのが、どうやら軍隊らしい。ただ、あまり刺激しないようにとの配慮からか、全体としては目立たない配置になっているようだ。私たちは上から見ているからよくわかるけど、実際に行進している人たちからは、警官や兵隊の姿はあまり見えないかもしれない。
なにしろほんとにすごい人なのだ。広場に通じる道の半分は隊列を組んで行進してくるデモ隊で道幅いっぱいに詰まっているし、残りの道は広場を一周して出ていくデモ隊に占拠されている。
組合ごとにおそろいのジャージを着ているので、上から見ているとダンス競技でも見ているかのように華やかだ。ひとつの組合が広場に入ってくるたびに、くだんのアナウンサーが大声で紹介している。みんな、組合の名前やスローガン、要求などを書いた(と思われる)幕を持ち、意外と整然と歩いている。そんな中に、服装もバラバラなら動きもバラバラ、まとまりのない集団だなあ、と思ったら「音楽家組合」だった。
しかし、つくづくすごい。これだけ大勢の人がデモに参加するメーデーなんて、東京では当然ながら見たことがない。いまの時代にどこの国だってないんじゃないかなあ。さすが、革命で成立した国家だわ。
でも、あとからあとから入ってくる中に、農民の姿はないのね。大体がおそろいのジャージを買える金銭的余裕のある組合というのは、メキシコの労働者層の中でも、かなり恵まれた部分なんじゃないのだろうか?
などと考えながら食事を終え、これからのことを考え出したら急に不安になってきた。一体、どのあたりまで行けば、タクシーが拾えるだろうか? オアハカ行きの飛行機は12時半に出発なので、11時半までには空港に着かなくてはならない。
あわてて部屋に戻り、出発の支度をした。