
絶対に自分では見たくない、ものすごくみっともないであろう へっぴり腰で下まで降りた。石段の端っこにしがみついて、1段ずつぴーぴー言いながらだ。こんなに根性なしだったとは・・・われながらナサケナイったりゃありゃしない。
それでも、一応、太陽のピラミッドまで行ってみる。ここはいかにも観光地らしく、民族楽器らしきものを売りつけようとする物売りなどがいるのだが、なにしろ広大な場所に人間が少ししか(多分100人くらいはいるんだろうけど、そんなもの砂漠の中の蟻みたいなもの)いないもので、あまりまとわりつかれているという緊迫感がない。
太陽のピラミッドは、近くに寄るとさらに大きい。そのうえ、ピラミッド本体に行く前に、土手みたいなところを昇っていかなくちゃならないのだ。土手の上に出ると、ピラミッド前の広場を見降ろすような形になる。見ると、ピラミッド横手のほうに、さっき私たちが歩いてきた土漠のほうに通じる細い小道が見える。
しばらくピラミッドを見上げて、さあ、どうしようか・・・と考えていると、下の広場のほうから悲鳴のようなものが聞こえてきた。つられて目をやると、さっきの小道のほうから黄色い風がこちらに向かって吹いてくる。
(゚.゚;)?????????????????????ナニ、アレ?
と思った瞬間には、すでに砂嵐は私の体じゅうを包み込んでいた! 思わず顔を手でおおいながら、その場にしゃがみこむ。さっきガイドが、「一体どこから来たのか謎だ」と言っていたあの砂が、ものすごい勢いで体に叩きつけられる。ピシピシピシッ!と音がするかと思うほどだ。うかつに息をすると、砂で鼻や喉が詰まってしまうから、息を止めていたら苦しくなってきた。
ようやくの思いで薄目を開けて前をうかがうと、そこにしゃがんでいたはずのWが、ずりずりと這うようにして、土手の向こう側に退避している。確かにあっち側に行けば、少しは砂の当たりがやわらぐはずだと思い、私も風に飛ばされないようしゃがんだままで、ずりずりと移動した。やがて、来たときと同様、唐突に砂嵐が去った。
「なんだったのぉ、今のは?」
「あのおじさんたち、知ってたのよね。ものすごく逃げ足早かったもの」Wが物売りのおじさんたちを指差して言う。確かに彼らは、悲鳴が聞こえたときにはすでに、土手のあっち側に降りてたような・・・そうよねえ、これだけ高い建物があって、間にああいう小道があれば、都会のビル風と同じ現象が起きても不思議はない。そこに砂がたっぷりあれば・・・
しかし、お互いにひどい姿だった。Tシャツもジーンズも変色してるし、鼻にも耳にも砂が詰まってるし、髪の毛もジャリジャリ。汗をかいたところに砂が貼りついて、顔も真っ黒。お気に入りのU2のTシャツがぁ〜。こんな日に白いTシャツなんか着てきた私が馬鹿だったのね。
そのあと、太陽のピラミッドを途中まで昇ったのだけれど、途中でまた砂嵐がやってきて、ほとんど戦闘意欲を失っていた私であった。