
ガイドブックには、朝と夕方の通勤時は、東京なみの殺人的ラ ッシュだし、スリも出没するから避けるようにと書かれていた。でも、このときはもう7時を過ぎていたし、ホームに出てみたらそれほどの混み具合でもなかったから、だいじょうぶだろうと思ったんだけどねえ・・・
どこのドアから乗ろうかと迷っているうちにドアが閉まりそうになり、あわてて飛び乗った私のために、閉まりそうなドアを押さえてくれたおじさんがいた。「まあ、ご親切に」というつもりで軽く会釈をしたのだが、これがいけなかったらしい。電車が揺れるたびに、私の体を支えるようかのように手を回すのだ。まあ、日本の痴漢みたいに、いやらしく撫で回すというのではなくて、まるで恋人がエスコートしているかのような触れ方なんだけど、どっちにしたって見知らぬおじさんなんかにそんなことされる筋合はないっ!
さっきの笑顔はどこへやら、ギロッと睨んでなるべく体を離し、乗り換え駅に着いたとたん、さっさと降りたのだった。ところが! くだんのおじさんも降りて、ついてくるではないか! げ〜〜〜〜ん! ほんとに変なヤツだったらどうしよう・・・。
なにも気づいていないWは、どうして私がいきなり早足になったのかわからず、変わらぬ足どりでついてくる。(ほらほら、おじさんがすぐ後ろにいるんだからぁ、さっさと歩かなくちゃだめでしょ!)心の中で罵りながらも、表面は何くわぬ顔で乗り換え通路を歩くのであった。 幸い、途中で「こんなことしててもしょうがないか」と思いついたのか、おじさんはいなくなってしまった。
あ〜あ、疲れた。
あとでこの話をWにしたら、「私もあのおじさんがずっと一緒にいるなあって思ってたのよ」と言われた。それで、変だと思わないのか、君は。