WALKING IN MEXICO



Part 11

立人類学博物館は、今回すごく楽しみにしてきたところだ。 が、しかし、こんなに大きな建物とは・・・入口に立っただけで、びびってしまう私たちなのであった。そんな気の迷いを察知したのか、玄関のゲートをくぐると

ブ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!

また鳴った。どうも私の体にはセキュリティ・チェックにひっかかる物質が内蔵されているらしい。最初から鳴ると思っていれば驚かないのよね。ガードマンは私の身なりを一瞥しただけで、「さっさと行っていいよ」というジェスチャーを見せた。さすがプロ。

はじめに地下のオリエンテーション室で解説ビデオを見る。円形劇場のような作りで、スクリーンに向かった階段に直接腰をかける。ちょうど開始時間だったらしく、入ったらいきなり真っ暗になった。ビデオはちょっとピントが甘くていまいちだったけど、その中で解説されている内容に合わせて、スクリーン前のステージのような部分に立体模型がドア〜ンッ!とせり出してくるのが、すごい迫力。

説明自体はスペイン語なので、内容はほとんどわからない。ただ、見たことのある遺跡の写真が移り、かろうじて「ティオティワカン」とか「チチェン・イツァー」とかいう固有名詞が聞き取れるので、いま何をやってるかくらいは想像できる。ともかく、アンドリュー・ウェッバーのミュージカルも真っ青の仕掛けを見るだけでも、20分を費やす価値はあるかも。

さて、外に出ると中庭に噴水がある。噴水といっても下から吹き上げるんじゃなくて、上からシャワーのようにザーザー落ちてくる。なんとなく落ち着かなくて、逆さに見たくなるのは、固定観念にしばられてるせいね。でも、暑いさなかにこれを見るとえらくきもちいい。

一応第1室から見始めたのだが、う〜む、これはちょっと生半可なことでは見きれないかもしれない、ということに気づいたのであった。 第6室のトルテカ室まで行ったところでガス欠。お腹はすくし、のどは乾くしで、もう1歩も歩けない状態になってしまった。レストランが確かあったはず、と表示を見ながら歩いていくと、なにやら民族楽器の響きが・・・レストランに降りる階段のところで、羽飾りの多い衣装を着た男4人が、亀とか貝とか木から作った楽器を駆使して演奏会を開いている。どちらかというと、音も姿もいわゆるアメリカ・インディアンという感じだけれど、メキシコでも北部のほうの種族は、こういう感じだったのかしら?

TRIBUというグループらしく、しっかり自作テープの販売もしてましたが、「これはどんなの」と聞くと、「こっちは伝統的なので、こっちはフュージョン」な〜んて説明してた。なかなか手広いのね。私も1本買ってしまいました。だって、メンバーのひとりがかっこよかったんですもの。ちょっと恥ずかしくて黙ってたんだけど、あとからWに「ひとり背が高くて細い子がいたでしょ?」と聞いてたら、「若くて可愛い子ね」と間髪を入れず答えた。な〜んだ、考えることは同じなんだ。

レストランはビュッフェ式になっていたが、アラカルトでも注文できる。相変わらず食欲がないWは、野菜と米のスープ(アボカドが入 ってる)だけ。私はエンチラーダス・コン・モーレとコロナ。少ないようだけど、これにパンとトルティージャが山のようについてくるから、けっこうお腹がいっぱいになってしまう。エンチラーダスは、ミートソースをトルティージャで包んで、ソースをかけて焼いた(煮た?)もので、この黒っぽいソースがモレかしらん? 上にごまがたっぷりかけてあるんだけど、こっちのごまは日本みたいに香りがないのね。炒ってないから? それとも種類が違う? でも、スープもエンチラーダスもおいしかった!

さあ、時間がないぞ!

大急ぎで1階の残りと2階をなんとかクリアする。1階第7室の奥にある昔の市場のようすを再現したミニチュアはすごい! もうほんとによくできていて、これを隅から隅まで見ているだけで30分くらいかかっちゃうくらい。動物を売ってる市場なんて、ちゃんとその動物の種類がわかるように作られていて、牛、豚あたりは当たり前として、鳥なんて鶏だけじゃなくてアヒルとか鳩とかいろんな種類がいるし、へびやあらいぐまやイグアナまで売っているのにはびっくり! あれはペットとして買っていくんじゃないですよねえ、やっぱり食べたのかしら?

売店で私が本やらポストカードやらを物色している間に、Wがグレイラインに電話して、内容の確認をする。グレイラインのほうのオアハカは、ホテルがツーリストクラスだというので、ティオティワカン観光のほうだけ申しこむ。

「ねえ、ホテルに1時半に迎えにくるって言ってるんだけど」
「あしたは近代美術館に行く予定だから、美術館の前とかじゃだめなの?」
「ホテルじゃないとだめなんだって」
あわててガイドブックを見て、美術館に近いホテルを探す。「これでいいんじゃない。カミノ・レアル」

行ったこともないホテルのロビーで迎えを待つことになってしまった。


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