
WALKING ON A HILL OF HEATH
地下のショップで買物をし、庭に出る。
ベンチに座ってぼ〜っとしていると、目の前の塀の上をリスがちょこちょこと走っていく。時々立ち止まっては、首をかしげて何か考えているふうなのがおかしい。
夏の夕方は、まだまだ明るい。
ここでしばらくのんびりして、ゆっくり帰ろう、なんて思いながら、ショップの外の廊下に置いてあったハムステッドの街の観光案内リーフレットを眺めていた。
「えっ!?」
思わずわが目を疑ってしまう。さっき、丘を登っていったとき、ほんとうは丘の上にあるという貴族の館、ケンウッド・ハウスまで行きたかった。でも、地図もないし、遅くなってしまうと帰り道が心配だしと思い、あきらめてしまったのだ。が、このリーフレットを読むと、
「ハムステッド・ヒースの端に建つ、広大な新古典様式の館は、1764年にロバート・アダムによって改築され・・・・・・現在ではレンブラント、フェルメール、ターナー、レイノルズといった、すばらしい絵画コレクションを収蔵している」
フェルメール〜〜〜っ?! が〜ん!!!!!!!!!
フェルメールおたくの私としたことが、なんて不覚な・・・ハムステッドとフェルメールというのが、どうも結びつかなくて、可能性を考えてみもしなかった。ナショナル・ギャラリーにあるのは前に見ていたので、イギリスの分はそれで終わりだと油断してしまったのかも・・・。
開館時間を見ると、4月から9月末までは10〜18時とある。いま、17時ちょっと過ぎたところだ。これから急いで行けば、間に合わないこともない(リーフレットの裏には地図も出ていた)。
でも、閉館間際にあわただしくフェルメールを見るなんて、いやだ・・・
鳥の声がのどかに響く美しい庭で、頭の中をめまぐるしくさまざまな考えがよぎっていく。
やめた! きょうは行かない!
その代わり、明日またハムステッドに来よう。
そう決めたらすっかり安心してしまい、のどが乾いてきた。さっき、ここに来る途中で見た、カフェテラスになっているパブで、ビールでも飲んで帰ろうっと。