群馬県太田市で発掘された東山道跡
  群馬県太田市の推定東山道駅路跡・・・2 (大道東遺跡)
東山道駅路の地図

大道東遺跡(だいどうひがしいせき)

大道東遺跡は鹿島浦遺跡の西にある遺跡です。この遺跡がある位置はまわりが低地に対して微高地となっています。この遺跡の西側には大道西遺跡があり、前年の調査で東山道と思われる側溝などの遺構が検出されています。今回の説明会では大道西遺跡からの推定東山道ラインの北側で発見された古墳時代から平安時代初期頃までの竪穴住居跡が中心で、これらは東山道沿いの集落跡と推定されています。

上の写真では幾つもの竪穴住居跡が並んでいるのがおわかり頂けるのではないでしょうか。右の写真は奈良時代の竪穴住居跡で、土器片なのど遺物が発見されたそのままの状態になっているところを撮影しました。一つの住居跡に沢山の遺物が残されているのには驚きです。人の生活の営みが伝わってくるようです。しかもこれらは1200年以上も昔のものだというのですからすごいことだと思いました。

遺跡から出土している土器には様々なものが見られます。食器類の杯(つき)・椀・皿や、貯蔵類の甕(かめ)・壺・瓶などが一般的なものですが、左の写真では土師器の杯と中央の白いのは須恵器の蓋(ふた)でしょうか。この遺跡で出土した土師器の杯には内部に放射状の磨き痕が見られるものがあるそうです。

右の写真は奈良時代の住居跡が二つ重なっているものです。二軒屋ということもないのでしょうが、隣接して二つの住居は建てられた時期が異なるものなのでしょう。鹿島浦遺跡の竪穴住居跡は平安時代のものが目立っていますが、ここ大道東遺跡の住居跡は一昔古い奈良時代のものが多いようです。東山道に面した微高地で住居跡としては好適地だったと思われます。住居も何度となく建て替えられたのでしょう。

左の写真では竪穴住居の縁に沿って、溝が掘られているものを撮影したものです。溝の使用目的は何であったのか、説明を聞き逃してしまいました。

大道東遺跡では住居跡の他に井戸跡や縄文時代・古墳時代の土抗などが見つかっています。井戸跡では調査中も水が湧き出ていたようです。古墳時代の土抗では完形に近い土器が出ていて墓の可能性もあるといいます。

右の写真は奈良時代の竪穴住居跡で、四隅に柱穴が確認できます。また、床面の中央部はかたく踏み固められているそうです。写真の手前の穴はカマド跡で川原石や甕で補強されているようです。他の住居跡からもカマドが見つかっていて、大部分のカマドは住居の北側壁中央部に設けられていたようです。

ところで、ハッキリとはわかりませんでしたが、この付近で見つかっている住居の方位なのですが、南側に推定される東山道駅路のラインより北西に傾いているようで、駅路に面して規整されているものではなさそうな気がしました。詳しく調べたわけではないので何ともいえませんが。

埼玉県所沢市の「東の上遺跡」では東山道武蔵路の遺構が見つかっていますが、その報告書などを見てみると、道路遺構に規整された住居跡が見られます。しかし、側溝の内側まで入る込んだ住居や道路のラインとは方位が異なる住居もあり、一概に住居跡がなんでもかんでも道に規整されているわけではなく、道の建設前、或いは廃絶後にも人が住み着くのに適していた土地であったため、当然住居の向きも様々なものがあります。住居と道を結びつけたがるのは素人の私の発想でした。

左の写真は上の竪穴住居のカマドを表面から撮影したものです。カマド穴の両脇に見られるのは、立てられた甕(右側)と左側は石状のものです。カマドの手前には横になった小型の甕も見つかっているようです。

右の写真は奈良時代の竪穴住居跡と更にその背後にも数軒の住居跡が見られます。後方に見られる山は「金山(かなやま)」で山の頂には金山城跡があります。金山城は関東では珍しい石垣がある山城です。

大道東遺跡では東山道が通っていた部分はこれから発掘調査が行われる予定だそうです。東の鹿島浦遺跡や西の八ヶ入遺跡では東山道の側溝が検出されていますが、路面の遺構は確認されていません。大道東遺跡は微高地のため、あるいは硬化層の路面跡が発見されるかも知れませんので期待したいと思います。

左の写真は時期は不明ですが掘立柱建物跡と考えられているものです。柱の穴(白丸の穴)が整然と9箇並んでいます。何の目的で使用されたどんな建物であったのか想像が脹らみます。

縄文・弥生時代の住居跡や土器は関東地方でもよくみられますが、奈良時代の遺跡というのは関東ではそう多くはなく(大概が寺院や役所の施設跡)、しかも一般の住居跡というのは私には大変珍しく思えました。中でも土器などの遺物は奈良時代の人が使用したものとして、当時の人々が身近な存在に感じられました。

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