日本列島・全国郷土玩具の旅

----福岡県篇・第2回----

---- FUKUOKA(2) ----




博多張り子
 糸島郡の「中尾家」は、明治初期から張り子を作り継いできた家柄です。現在の製作者の中尾ひでこさんは、3代目の俊雄(平成2年没)さんの妻です。
 中尾さんの博多張り子は、主に「博多だるま」と「虎」ですが、その他にも、ここには掲載できなかった「えびす起き上がり」「お面」なども作っています。
 博多張り子のの特徴は、首振り式で、胴が大きくよく太った虎です。
 博多だるまは、もともとは、応神天皇伝説(参照:愛媛県篇(1)姫だるまの項) にもとづく「女だるま」だけでしたが、昭和初期より「男だるま」が加わったようです。
 博多だるまは、関東系のだるまとはかなり違いがあります。胴模様は松竹梅の模様と、胸から金で放射線状に線が引かれており、古くからの博多だるまの特徴です。
「男だるま」は頭部が小さくて中間がふくらみ、豆絞りの鉢巻をしています。顔は深い肌色が塗られれ、鼻が団子鼻です。
「女だるま」は、顔は白く塗られ、顔から前髪が下げられています。

製作者:中尾ひでこ(中尾商店):糸島郡二丈町深江1268..TEL: 092-325-0241




津屋崎人形
 博多人形の古風な姿を残しているのが津屋崎人形です。現在も原田三家が製作を続けています。
 津屋崎人形は大型人形に特色があります。全国の土人形の中で、常時大型が製作されているのはここだけではないかと思われています。また、小型の多くの作品もていねいな彩色ですぐれた人形です。
 掲載の大型以外にも何種類もの人形があり、注文によって、女物の「道成寺」や「八重垣姫」なども作られます。
 津屋崎で土人形が作られるようになたのは、初代が卯吉(文政12年没)か、その子の半兵衛(明治11年没)かは、はっきりと確かめられる資料がありません。
 しかし、津屋崎の在自(あらじ)に土器に最適な土があり、当初はその土で壷やかめを作っていました。江戸末期か明治初期に、博多人形に習って、土器の製作のかたわら土人形を作ったのが始まりでした。半兵衛の子の半四郎(明治29年没)の時代に、原田家は分家して原田三家となりました。

製作者:原田半蔵:宗像郡津屋崎町津屋崎840..TEL: 0940-52-0432
製作者:原田活男:宗像郡津屋崎町津屋崎786..TEL: 0940-52-0419
原田三右衛門家(宗像郡津屋崎町):原田三右衛門は昭和58年になくなられ、現在はその家族の方が製作を続けていますが、土鈴が主で、また一般への小売はされていません。




縁起木馬・幻の「きじ馬」
 九州の中部から北部にかけて、「きじ馬(きじ車ともいいます)」が作られています。
 縁起木馬・幻の「きじ馬」は商品名で、作者の金子柳舟さんは、本業は電気技師ですが、子供の頃(昭和初期)に祖父が作ってくれた「きじ馬」を想い出して、昭和60年頃に復元されました。
 作品の大きさは、大(16センチ位)から小(6センチ位)までの4種、鬼皮、渋皮つきの両方があります。注文によっては大きなものも作られるそうです。
 このきじ馬には、胸のへんに小さな穴があけてあります。かって祖父が作ってくれたきじ馬をよく見ると、このような穴が胸にあるのに気付き、釘で中のものをほじくり出すと、紙の「お守り」のようなものが出てきたので、お守り入れの穴だろうと思い、復元作品にも穴をあけたということです。
 なお、これから先ににも各地の「きじ馬(きじ車)」を紹介する予定なので、そのとき各地の違いを比べてみてください。

製作者:金子柳舟(栄):宗像市三郎丸830-7..TEL: 0940-32-5575
起上りふく
 門司の柴田さんが、製作されています。柴田さんのご希望でもありますが、交通不便な所なので、作品の購入は、小倉城売店で求めるとよいとのことです。大(高さ14、長さ16、幅13センチ)ほか中、小があります。
 この地方では、魚の「ふぐ」を濁らずに「ふく」といいます。ふくは「福」に通じ、縁起物とされています。
 柴田さんがこの張り子を手がけ始めたのは、昭和30年頃で、当時、北九州ではちょっとした郷土玩具ブームで、「柿の種」という趣味グループができ、お互いに作品の批評をしあっていました。  そんなとき、「第1回北九州創作玩具展」に出品、この「起き上がりふく」が市長賞に入選、それがもとで北九州の土産物として製作するようになりました。ずっと、北九州のみで販売されていたため、あまり知られずに今日に至っているとのことです。

製作者:柴田由宇助:北九州市門司区東門司1-1..TEL: 093-333-0749
小倉城(観光・即売場):北九州市小倉北区城内2-1..TEL: 093-561-1210
参考資料リンク: 【CPH】→郷土玩具マップ→福岡→「幻のきじ馬木庵 :縁起木馬」


▼‥[Next] 福岡県篇(3)     △‥[Back] 福岡県篇(1)-1


  
  【民芸館】…▲
INDEX
   HOME】▲   高知県篇(1)

(1999.5.16掲載)