ノイローゼ完治の実践技術、9.私の方法 18.目次 8.心の正常な状態とは 10.この方法を理解・実践する為の知識           

私の考えるノイローゼ治療法

 いままで、いろいろな精神集中行動をした例をあげ述べてきたが、つまりこれらのことから、心のエネルギーを開放した状態が正常であるというか、良好な状態であるといえる。

   噴出、 一部の感情だけが動き出す、

   開放、 心が全体的にふくらむ(全部の感情が同時に動く)

 対人恐怖症の人がみんなのまえで話をする場合、緊張しながらも途中からうまく思い通り堂々と話せたり、最後まで声が震えたような状態で終ってしまったりする。このように少しの差で噴出になったり、開放になったりする場合もある。
          

噴出から開放にするには

 さて今までの説明で心のエネルギーの開放された状態が正常な状態、心のエネルギーの噴出した状態が神経質症状の現われた状態ということを説明した。
 そうすると、この噴出した状態から開放された状態に変えることができれば、ノイローゼを治すことができるということになる。つまり、一部の感情だけが動いていた状態からすべての感情が動いている状態にするのである。ではどうすればよいのであろうか。
            

心のクセの方法から

 それではここで広瀬米夫著の「心のクセ」に載っている方法を引用して学びながら、神経質のエネルギーに対する性格改善法について考えてみよう。

「一つのエネルギーは、同じような状況のもとで、同じようなきっかけさえあれば、いつでも同じように心を動かす、こうして習慣的に、しかも具体的な形であらわれるものを『心のクセ』とよぶ、たとえてみれば心のエネルギーは水面下にひそんでいるものであるから、直接つかみとれない。水面の上に一つの波という具体的な形をとってあらわれたときにつかみとれる。したがって水面下にひそんでいる心のエネルギーは心のクセを介して間接的につかみとれるものである。」
    

*神経質のエネルギーの多い人が神経症の症状となって出てくる。

      

心の反応

1 心のクセは同じような場面で同じように出てくる。

2 水面下に潜んでいて、ちよっとしたきっかけで出てくる。

 心のクセというものは心のエネルギーの化身であるといってもよい。したがって心のエネルギーを正しく働かせる為には、心のクセに働きかけ正しい方向へ導くのである。

「弱気のエネルギー(神経質のエネルギー)の場合、うっとうしくなる。払っても払っても一つのしこりがこびりつく。こういう時、自分で自分の心をもてあます。「こんなことを考えたってムダだ。もっと明るくなろう」と、いくら自分にいい聞かせても、心はいうことを聞いてくれない。しまいには自暴自棄な気持になって酒でも飲もうということになるが、酔っているあいだだけでさめればまた逆襲してくる。決してカラッとならない。(中略)
 ではどうすればよいかということであるが、おきるがままに自分に受け入れていくのである。
 すべてのエネルギーから出るすべてのクセがそうであるが、「ア、クセが出た」と自分で気づくとかなり弱くなるものである。おきるがままに絶えず自分に受け入れていると、クセがはげしく出ること(すなわちエネルギーがはげしく動くこと)がしだいに少なくなる。
 生きているかぎり心のエネルギーは動きを続け、心のクセは出つづける。だから押える必要はない。受け入れるのである。
 原則的には、このようにいえるであろう。しかし右の消極的なエネルギーの場合はこれでは能率が悪い。それで次のようなことを実行する。
 くよくよしている時は歩いていても必ずうつむき加減に歩いている。何かくったくがあるときは椅子に腰かけても姿勢にあらわれている。だからその姿勢を変えるのである。
 歩きながら「くよくよしている」と気づいたらシャンと胸をはって、深呼吸を一つして大空を見上げる。そして「きれいな空だなあ」と思うのである。座っているときなら背中をのぱして深呼吸をするとか、ほかのものに視線をうつす。壁の油絵をみて「きれいな絵だな」とか、生け花をみて「上手に生けてある」と思うのである。
 スモッグの空でも下手な絵でもそれはしかたがない。このように「思いこむ」ことによって、その何秒間かのあいだだけでも心が切り替わっている。この点が非常に大事な点である。またこういうくったくのある状態は、職場の中よりも通動電車の中などが多いから、くよくよしていると気づいたら窓の外を見て「いい景色だなあ」とか「あの広告はかわっている」とか思うのである。
 なぜこんなことをするかといえぱ、こびりついでいる「しこり」は一つの考えである。「こんなことを考えてもムダだ。もっと明るくなろう」というのは別の考えである。一つの考えを同じ水準であるところの別の考えで切り替えることは、非常に困難であり、むしろこのエネルギーの場合はほとんど不可能に近い。
 そこで水準の違う行動によって切り替えるのであるが、行動といっても別に大げさでなく、深呼吸するとか視線をうつすというようなことでよい。こういうちょっとしたことを根気づよく続けていると意外に効果がある。」(心のクセ)から

 不安や恐怖がおきたらおきるがままに受け入れる、というのは他のノイローゼ治療法でもよく言われることである。しかし心のクセに書いてあるように、それだけでは能率が悪いし、大きくでた症状を簡単に受け入れるといってもむずかしい。
 それで、心のクセの方法では心の切り替えをするのであるが、それでも症状によっては受け入れるのは容易でない。その場合私は切り替え精神集中によって受け入れるのである。この方法によれば大きく出た症状でも消滅させることができるからだ。

1無心になって受け入れる(初歩的な基本)

2心の切り替えによって受け入れる(より能率的)

3心の切り替え精神集中によって受け入れる(能率的で、どんなに重い症状でも消減させることができる)

    

心の切り替えと精神集中をドッキングさせることによって

「心のクセ」の方法では心を切り替えることによってクセを受け入れ、正常な状態に戻すわけである。(この時も心のエネルギーは開放される)それから前にカーネギーの「道は開ける」からの引用で、作業した時であれ、祈った時であれ、精神集中行動をした為に煩悶状態から心のエネルギーの開放状態になったと説明した。
 そうすると、心の切り替えの方法と精神集中行動をドッキングさせて実践すれば、もっとよい効果が現われるのではないかと考えることもできる。
 私の考えるノイローゼ治療法といっても原則は「心のクセ」の本に書いてある方法と同じである。一つ一つのノイローゼ症状を心のクセとしてつかんで、心の切り替え精神集中を行い、心のエネルギーを開放し、一つ一つのノイローゼ症状を治してゆくという方法である。
 ノイローゼは、心のクセの本に述べてある弱気のエネルギー(神経質のエネルギー)を強くもっている人が、その他のエネルギー等とかかわりあってできる悪癖である。だから、この悪癖がでるたびに心の切り替え精神集中を行い、このエネルギー等を開放し、一つ一つの悪癖をとりのぞいてゆくのである。

一つの症状に対しての具体的な実践

 心の切り替え精神集中法の実践について、具体的な一つの症状を挙げて考えてよう。A子さん三十歳は、不潔恐怖である。
     

症状として

 動物を見ると手を洗わずにはいられなくなる。日常生活のなかでネコや犬を見るとどうしても手を洗わずにはいられなくなる。そればかりか、テレビに映った動物を見た時や日常の会話の中で、犬やネコという言葉が出てきただけでも手を洗わずにはいられなくなる。
 さて、この症状をどう治すかについて考えてみよう。A子さんがテレビに映ったネコを見た。そして、非常に手を洗いたくなったと仮定する。いつもならばこのまま水道のところへ行って手を洗ってしまうのだが、ここで彼女はその衝動を消滅させるためにはどうしたらよいのだろう
 ここで意識的にエネルギーの流れを変えなくてはいけない。この時すぐに切り替え精神集中の実践をするのである。
 ではどうするかというと、この時、水道のところへは行かないで、別の精神集中行動をするのである。たとえば本棚のところへいってむずかしい本を読む、(本等が埃などで汚く思えて持つことができない人は別の精神集中行為をする。)またはクイズを考える。数学の間題を考える等々、つまり手を洗うかわりに他の精神集中行為をするのである。そうして強迫神経症を誘発する感情を消滅させるのである。
 精神集中行動を何分間か続ければ、必ず症状は消滅してしまう。(この場合手を洗いたいという感情が消滅する)
 今度は道を歩いていて犬を見た。そして、手を洗いたくなったとしよう。そうしたらただちに犬から視線をはずし、近くに看板や文字の書いてあるものがあったらそれを夢中で何度も読む。そういうものがなかったら数をかぞえる、祈る。そういう精神集中行動を行うのである。
 この心の切り替え精神集中行動を、症状が出るたび(A子さんの場合、動物を見て手を洗いたくなった時)にくりかえし行うのである。
 つまり、一日平均三回症状が出れば、一力月で九十回実践することになる。九十回も実践するとだんだんその症状も和らいでくる。そうすると、その症状の出る程度に応じて精神集中行動をすればよくなり、最終的には完治することができる。またそうした精神集中と併行して、常に創造的な生活をするように心がけることである。(創造的な生活については、後からでてくるのでそこを読んでほしい)

*症状(心のクセ)が出た瞬間、心を切り替えて精神集中行動を行なう

1心を切り替えることによって症状の出る回路を断ち切り、噴出をストップさせる。

2精神集中行動によって正常な流れを強く勢いのあるものにし、噴出しそうな心のエネルギーを開放されるように変える。

3心のエネルギーは開放され、正常な回路だけを流れるようになる。