ノイローゼ完治の実践技術、7.神経症になぜなるのか 18.目次 6.人によってなぜ性格は違うのか 8.心の正常な状態とは     

持っている心のエネルギーの量によって、反応が違う

 最初の二人の兵士の例にもある様に、同じ状況でも違った反応を示すのは、持っている心のエネルギーのうち、どの種類の量が、多いか少ないかが、かなり影響すると思われる。
 ある人が怖がることを別の人は全く怖がらなかったり、固じような出来事に遭遇しても、慌てる人とのんびり対応する人とがあり、また日常の生活においても怒りっぽい人、おとなしい人と、その反応は様々である。
生れながら持っている心のエネルギーの量がその人にどんな反応を生じさせるか、大きく関係すると言える。
 人はだれでも十二種類くらいの心のエネルギーを持っており、そのエネルギーの多い少ないが、性格に大きな影響を与えている。
積極的なエネルギーを多量に持っている人は、生活の場面ばめんでそのエネルギーが出やすく、消極的なエネルギーを多量に持っている人は、やはりその生活の場面ばめんでそのエネルギーが出やすい。
 ある意味では、神経症者の「対人恐怖」は、対人関係はうまくやりなさいよ、「刃物恐怖」は刃物は 気をつけて使いなさいよ、という警戒警報なのである。
だれでも多少は出るが、これが量が多すぎるために過度に出て、恐怖症となってしまうのだといえる。
       

感情のはたらき方によって性格が決ってくる

 しかし、エネルギーの量だけで性格が決定されるわけではない。
性格は感情のはたらきであると前に述べたが、それは言いかえれば、その人間の持っている感情がどのようにはたらいているかということである。
 同じ感情を同じ量持っていても、はたらき方しだいで性格は違って見える。
 つまり同一人物でも精神的に充実しており、周囲の目から見ても輝いている時と、煩悶し苦しんでいて、周囲の目から見ると、沈んで見える時がある。
 それがもし一生持続するならば、前者はいつも輝いていて明るく魅力的な性格の人だということになり、後者はいつも沈んでいて暗い感じの人だということになる。
 つまり同一人物でも違った性格に見える。心のエネルギーの種類も量も全く同じに持っていたとしても、違った人間になる可能性があるということである。
  

場面ばめんによって、プラスにはたらいたりマイナスにはたらいたりする

 同じ種類の心のエネルギーであっても時によって、また、場面ばめんによってプラスに働いたり、マイナスに働いたりする。

 たとえばコツコツ努力するエネルギーを持っている人の場合、同じような働きをしていても、その場面に見合っていれば、ねばり強い人ということになり、その場面にそぐわなければ、しつこい人という印象を与えることになる。
 同じ様に、積極的なエネルギーも、その時々によって、建設の推進力となったり、目己破壊の原動力となったりもする。
 神経質のエネルギーは、時によっては優しさや思いやりとなって働くが、厳しくすべきときに弱さとなって働くことも多い。

        

性格の違いは量と働きの両方が関係する

つまり性格の違いは、心のエネルギーの量と働きの両方が関係するということになる。

 一、感情の量、二、感情の働き、 

 では常に輝いてみえるような性格になるにはどうすればよいか。
 それは感情を正しく働かせればよいということになる。つまりこのような考え方からノイローゼも感情を正しく働かせることによって、治すことができるといえる。
           

どういう性格の人がノイローゼになるか

 どういう性格の人がノイローゼになるかと言うと、一般的に神経質な性格の人がなりやすいといわれている。それは神経質な感情、つまり神経質な心のエネルギーを多量に持っている人がなりやすいということである。
 しかし、必ずしも神経質な心のエネルギーを多量に持っている人がノイローゼになるとは限らない場合もある。
 たとえば、せっかちな人。神経質の心のエネルギーを、多量に持っているほかに、せっかち(意思をつきあげるエネルギーという[心のクセ〕)なエネルギーを多量に持っている人はならない場合が多い。
 つまり刺激に対してあわてて行動に移る人は、かなり過度な反応はしてもはからいがなく、とらわれに発展しない場合が多いと言える。
 神経質な感情(エネルギー)と他の感情(エネルギー)とのからみあいに依ってノイローゼになるのだが、前に述べた知的な遠心力の強いエネルギー等は、最もはからいになりやすい種類のものである。
           

ノイローゼ症状はいつ現われる

 たとえば恐怖症といわれる人々がいる。対人恐怖、疾病恐佑、不潔恐怖、尖鋭恐怖、刃物恐怖等である。
 彼らはある場面に遭遇すると症状が出てくる。
 対人恐怖の人は自分より目上の人に会うとか、会いたくない人に会う時。不潔恐怖の人は手を洗う時。刃物恐怖の人は刃物が近くに置いてある時等に、症状があらわれてくる。
 しかし彼らはいつも症状が出るわけではなく、出ない時もある。では彼らの心がどういう状態の時に出て、どういう状態の時出ないのであろう。
           

出るときに共通しているのは

 なにもすることがなく暇な時だった。精神的に弱っていた。病気の時だった。等、心が活動的でない時でなのである。
       

ノイローゼ症状の出る時

・暇である(精神集中していない)
・仕事が単調であり精神を集中しなくても作業ができる
・病気である(精神集中できない)
                                               

出ない時に共通しているのは

 対人恐怖の人ならば、遊びに熱中している途中で人に会った時。雑念恐怖の人ならば、忙しく仕事をしている時。つまり精神的に活発な時なのである。特に何かに熱中している時は神経症はほとんどおこらない。

 つまり一つのことに精神を集中させ、没頭している時は、心の中の「悪いクセ」はあらわれて来ないか、又はその可能性が少ないといえる。

 それでは心の原理を学びながら、ノイローゼとはどんな状態なのか。なぜ活動的でない時に症状が出るのか。心のエネルギーの流れはどういうふうになっているのかなどについて考えてみよう。
     

心のエネルギーの流れを川にたとえてみた流れと働き方

 心のエネルギーの流れは、その人の心が活動的な時は速く流れ、そのため水位は低くなり、川岸からあふれ出すこともなく、本来の働きをする。
 その人が活動的でない時は心のエネルギーの流れがおそくなり、水位は高くなる。そのためその人が大量に持っている一部の種類のエネルギーが川岸からいろいろな方向に流れ出す。すると、心のエネルギー本来の働きではない悪い働きをするようになる。

 つまり、心が活動的な時は、全部のエネルギーが同時に働き、心が不活発な時は、あふれ出した一部のエネルギーだけが働くということになる。

 何もしないでいる時やひまな時は、どの心のエネルギーでも溜って、噴出しやすくなるという性質がある。そうすると、怒りやすい人はより怒りやすく、不安になりやすい人はより不安に、つまり、その人が多く持っているエネルギーが噴出しやすくなる。そしてそれらは、すべてそのエネルギーの性質の悪い面を強く出すということである。
            

症状の回路の形成

・たとえば一月一日に最初の症状が出たとする。その時はショックをうけても何日か経つと忘れてしまうかもしれない。しかしその時に悪い回路が少しできるので、それからは症状が出やすくなっている。

・そして一月十二日にまた症状が出たとする。その時にまた回路も大きくなる。・そして一月十九日に症状が出たとする。そうすると症状が大きくなるとともに、回路もだんだんできあがってしまうのである。

・自然に治る時がないわけではない。創造的行為のような精神集中の度合の大きい生活を持続していると、治ることもあり得る。
            

はからうことはいけない

 はからうことを良いことと思っている人は、なかなか治らず症状が進む可能性が大きい。
 はからいにもいろいろあるが、私の場合は不安や恐怖がおきた時に、自分自身に言いきかせるということをした。そのためかえって不安や恐怖は増大し、何度も身動きができなくなった経験がある。
 この言いきかせるという行動の裏には、不安や恐怖があっても自分の行動は自分で支配できるという考えがあり、自分さえしっかりしていれば大丈夫だどいう考えがあった。
 したがって正しいことを言いきかせれば心が納得し、不安や恐怖は鎮まると思ったのだが、鎮まるどころか反対に増大させる結果になった。
 そのため症状は進み、中学一年の十三歳の時から、アメリカに仕事にいった二十二歳の時まで長い間苦しむことになった。
           

なぜ病気の時に症状がでる

 読売新聞の「人間この不可思議なもの」に。サルにヒロポンを打つという実験をした結果が書いてある。
 それによると、(日頃活動的なサルはますます興奮が高まり、日頃しょぼくれていたサルはますますしょぼくれるそうである。
 ちなみにボスザルをみてみると、ボスという地位を守るため、たえず精神集中を強いられる緊張のためか、精神の抵抗力をみせ、なかなか頭がおかしくならなかった。さらにヒロポンを打つと食欲を減退させ(ヒロポンは神経興奮のほか食欲を減退させる働きがある)死んでしまった。
 ヒロポン中毒したサルが、健康な状態にもどったところで、ヒロポンではなく無害な食塩水を注射してみた。するとたちまち症状が再発したそうである。
 病気や、心理的なストレス、酒の飲みすぎ等でノイローゼが再発することが多いが、サルの実験からみてもそういうことがありうると考えられるのである。)読売新聞からの引用
          

回路ができると症状が出やすい

 強迫神経症者である対人恐怖症者や不潔恐怖症者に、症状を出すなといってもむずかしい。何故ならもう症状を出す悪い回路ができてしまっているのだから。

@噴出が始まった瞬間

 手洗恐怖症の人は、噴出が始まると手を洗いたくなる。

A感情に負けて、強迫行為をすることによって大きく噴出

水道のところへ行って手を洗う。すっきりしないので、ますますむきになって洗う。症状が大きくなり、身動きができなくなる。