歌舞伎「隅田川」と能の絵本「隅田川」

数年前に、新年のNHK教育TVの番組で、たまたま、歌舞伎「隅田川」を見たのです。内容が梅若伝説にもとづくものといことで興味を持ったのでした。始め は、冒頭部分だけ、ちょっと見ようと思っていたのですが、いつの間にか能の世界に引き込まれて最後までチャンネルを合わせたままとなってしまいました。た しか、舞台は、隅田川のほとりで、塚と柳が抽象的に配置されていて、登場人物は母と小舟の船頭だけが印象に残っています。ストーリーは、二人のかけあいで 淡々と進む地味な能で、しかも最後まで悲しいものになっています。梅若丸の無念な思いと子の死を知った悲しみに涙するものです。新年早々、決しておめでた い内容ではないのですが、親子の愛についてしみじみと思ったことでした。
この度、永い間手を付けていなかった梅若伝説に関連するページを更新するにあたって、能についてまったく無知なのですが、上記のことが有ったものですか ら、あらためてウェブや本を調べていましたら、地元の市民図書館で観世流能楽師さんと日本画家さんのお二人で創られた絵本とめぐり合いました。能と歌舞伎 では違うとは思いますが、この絵本の絵と文章が、上記の歌舞伎「隅田川」をテレビ放送で見て感動した思い出を蘇らせてくれたことがあり引用させていただき ます。最近よくあるアニメ風の絵ではなく、日本画をベースにした平安時代の貴族や人々の姿がとても気に入りました。

○著者片山清司さんのあとがきから一部引用;
能「隅田川」は作り能とよばれ、民間伝承を集め、舞台で演じるための戯曲として室町時代に、世阿弥の長男観世十郎元雅によって書き下ろされたものです。梅 若丸が、恐ろしい人商人(ひとあきんど)によって命を落とすのですが、梅若丸が読者の子どもたちと同世代であるということ、また隅田川という川が、”春の うららの隅田川・・・”というフレーズでもとりあげられるようななじみの深かい川であることが、絵本にしようとした理由です。
 たいてい「隅田川」のような”狂女物”とよばれる物語は、幽玄が主題となり、ハッピーエンドになることがほとんどです。しかし能「隅田川」は他の”狂女 物”とは違い、子をなくした母親の悲しみにテーマをしぼりこんでいるのが特徴です。

○本文より、冒頭部分を引用;
むかし京の都とよばれていたころ、梅若丸という名のおさない少年がおりました。やさしい父と母に大切に育てられ、何不自由なく幸せにくらしていましたが、 とつぜん父が亡くなり、一家は悲しみにつつまれます。母は大切な夫の形見と思い梅若丸をいっしょうけんめいに育て、梅若丸も母の言うことをよくきく、すな おな子となりました。
ところがある日、母が家に帰ってくると梅若丸のすがたが消えていました。
いったい何があったというのでしょうか。どこをさがしても、だれにたずねても行方が知れず、母はとほうにくれるばかりでした。




書 名;能の絵本 隅田川 (愛しいわが子をさがして)
著 者;片山 清司 文 、 小田切 恵子 絵
出版社;BL出版
発 行;2006年4月20日第一刷
価 格;1,600円税別





梅若塚正面より梅若堂正面より。


















梅若堂東側より梅若堂東側より。
梅若堂の由緒によれば、場所が防災地区内のため、木造のお堂をそのまま設置しておくことは許されないため、外側をガラスケースに収納する様に防火対応して いる様だ。


















梅若堂由緒書き梅若堂由緒書き
 























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