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「象は鼻が長い―日本語文法入門 (三上章著作集)」三上 章(くろしお出版 1960年10月)

■英語からの借用ではうまくいかない日本語文法■

私の手元にある本は2003年11月発行の28刷です。ロングセラー本です。長く売れ続ける理由は、本書を読むと納得がいきます。

「象は鼻が長い」という短い文に、英語の文法を借用しただけでは説明できない、日本語の特徴が端的に表されています。この文の主語は象なのか鼻なのかそれとも両方なのか。こんな簡単で重要なことが学校で教えられている日本語文法ではずっと置き去りにされています。本書では「ハ」の機能に着目しながら、日本語の文法を考察してあります。

主述関係を前提として考えてしまったために、「象は鼻が長い」で行き詰ってしまう学究の徒たち。では、出発点から見直しましょうと提案するのが本書です。

興味を持たれた方のために、「終わりに」の冒頭部分を引用しておきます。

以上、「ハ」に関する文法のあらましを、主述関係という観念を使わずに、したがって主語という用語を使わずに述べました。主述関係という観念を捨てない限り、「Xハ・・・・・・」の構文を解明することはできませんし、また本書の説明をひととおり理解された人は、ふたたび主述関係にもどるわけには行かないでしょう。じつに、主述関係という色メガネほど日本文法の研究を阻害しているものはありません。主述関係の片方を占める主語もむろん同罪です。わたしはすでに二十年近く、主語という用語の使用を拒みつづけています。

主語廃止論というのは、字づらから早合点すると顕在、潜在の「ガ」をないがしろにするみたいですが、そうではありません。「Xガ」は「Xヲ」「Xニ」などよりも相対的にずっと重要ですから、それを重視するのは当然であり、わたしもそのことに反対しているわけではありません。文法で行なう論理的な訓練をかりにガノニヲ訓練と呼べば、先頭の「ガ」に大きな重さが与えられることは言うまでもありません。たいせつなことは、それを正しく(、、、)重視することです。

「文は主語と述部の二部分から成る」というのは、ヨオロッパ語に固有の偏り(、、、、、)であって、日本語には当てはまりません。にもかかわらず、後進国根性いや堅く、主述関係というものをむやみともったいながる人が断然多数なのです。学界の保守層、教育界の大部分、一般知識階級を通じて何十万という頭数でしょう。圧倒的な多勢に無勢で、主語廃止論の前途は困難を極めています。 - 178-179ページ


外国人に日本語を教える教科書では、実態に合わせた文法が使用されている。私たちは、この事実をもっと深刻に受け止めるべきではないだろうか。

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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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