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「洗面器でヤギごはん―世界９万５０００ｋｍ自転車ひとり旅〈３〉」石田 ゆうすけ（幻冬舎2012年7月）
■肌で感じた世界■
北米から南米、ヨーロッパ、アフリカ、アジアへと自転車によるひとり旅の記録。
食を中心とした親しみやすい内容が、面白おかしく記されていて引き込まれていった。
フランスで食事の最後に登場して納得のいくまで食べるチーズ、イタリアの人気店で出される絶対においしいとしか思えないピザなどが印象深い。
しかし、この本をここに記録した理由は別にある。ヨーロッパから地中海を渡ってアフリカに行き、故郷のように感じたアフリカの人々との触れ合いが終わりを告げるときのせつなさがあるからだ。
貧しいながらも気さくで陽気な人々とすごした世界から、高層ビルが並び、見慣れたグローバル企業の商品にあふれた近代文明圏に再び近づいていくときの足の重さが、文章からありありと伝わってくる。
旅はさらにアフリカ最南端からアジアへと続いているが、この旅の意味はアフリカに行き、故郷のようなこの大地と人々に出会うこと、そして近代社会のウソを実感することだったのではないだろうか。
そんな風に思える一冊でした。
同じ旅を別の視点で描いたIとIIも出版されています。
