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「鳥の手帖」尚学図書(編集)(小学館 1990年3月)

→目次など

■写真と図譜に加え、古来からの文献例も収録されて、鳥を身近に感じさせる本■

この本は、
・鳥が好きな人
・日本画が好きな人
・俳句や短歌をたしなむ人
・江戸時代に興味のある人
などを想定して作られているようです。

江戸時代後期に盛んになった博物学によって生まれた、精密な動植物画のうち、御小姓組として将軍に仕えた毛利梅園の制作した『梅園禽譜』から、多数の図譜が採録されており、写真とは一味違う楽しみがあります。

描かれた鳥たちは、それほど正確ではないようですが、図譜と写真とが無作為に収録されている本書のページをめくっていくと、普段とは違う眼で鳥を感じ取ることができるように思います。

図鑑的な説明に加えて、文献例が記載されていることも本書の特徴の一つです。
たとえば、「ちどり(千鳥)」の項を見ると、他の鳥たちと比べて多くの文献例があり、8世紀から高村光太郎までの文献が挙げられていることから、古来からずっと親しまれてきた鳥であることがわかり、逆に人々が海岸や河原の近くで千鳥を目にする機会の多い暮らしを続けてきたことも推測されます。

このように文献例を合わせて見ていくことで、鳥たちを身近に感じることができるようになっています。

ちなみに、『梅園禽譜』から採録された鳥たちからは、私は獣的な印象を受けます。

内容の紹介


「うぐいす(鶯)」の項の文献例から一部紹介します。

*万葉-五・八四五「宇具比須(ウグヒス)の待ちかてにせし梅が花散らずありこそ思ふ子がため<門部石足>(8世紀後)
*古今-仮名序「花になくうぐひす、水にすむかはづの声をきけば、生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける」(905)
*枕-四一・鳥は「鶯は、文などにもめでたきものに作り、声より始めて、さまかたちも、さばかり貴(あて)にうつくしきほどよりは、九重の内に鳴かぬぞ、いとわろき」(10世紀後)
*平家-四・厳島御幸「梢の花色おとろえて、宮の鶯声老いたり」(13世紀前)
*俳諧・鷹筑波-五「鶯も尺八ふくか谷わたり<氏満>」(1638)
*俳諧・葛の松原「鶯や餅に糞する椽の先<芭蕉>」(1692)
- 92ページ


うぐいすの場合、このような文例が13例ほど収録されており、谷崎純一郎の『春琴抄』が最新です。

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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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