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「イヤな仕事はやらないで済ませられる」ウィリアム・J・ライリー(著)福原 誠一(訳)(白揚社 昭和31年9月)
→目次など
■イヤな仕事をやらないで進みたい方面の仕事で生きていく具体的方法■
60年近く前の1956年に発行された本ですが、イヤな仕事を続けていてストレスのたまっている人々に向けて、どうすれば自分のやりたい仕事の方向へ進むことができるのかが具体的にまとめられています。
これまでに読んだ何冊かの自己啓発本と比較して、内容の具体性という点で本書は充実していました。
・35歳までと35歳〜55歳、55歳以上の3年代に分けて行動指針が記述されている
・職業カウンセラーとしての経験を生かして、具体例が複数上げられている
・独立や経営だけでなく、社員として生きる道も示されている
・ただ、夢を追うのでなく、生活設計を立てることが前提になっている
・仕事を得るために自分を売り込む方法が具体的に示されている
・障害の克服方法が具体的に示されている
・組織で成功するために人間関係を大切にすることが指摘されている
具体的で実用的な内容を記述してあるところに、米国人の価値観を感じました。
メールマガジンでも紹介したように、訳者あとがきで、「まさに現在の日本にピッタリ当てはまる」問題が本書の主題であり、日本中の各家庭にタダでこの本を一冊づつ贈りたいくらいとして、「皆がこの本を真の意味で活用すれば、もっと明るく楽しい毎日が生活できるようになるに違いない」と豪語してあります。
実際に、本書に示されているやり方にならって、やりたい方面の仕事を得たならば、きっと楽しく充実した毎日を送ることができ、経済的にも安定した老後を迎えることができるでしょう。
イヤな仕事を続けることで、家族や周囲の人々に当たりちらしたり、精神を病んだりするよりも、自分に適した仕事をすることによって明るく楽しい毎日が実現されることは事実でしょう。しかし、『逝きし世の面影』に描かれているような、歌をうたいながらの労働や、櫛なら櫛だけ、ザルならザルだけと特化した製品を作りながら販売する仕事などはなくなってしまいました。
このような労働環境の変化を前提としながら、まだ、本書のようなやり方で仕事を得ていくことは可能でしょう。ただ、公務員になるか、外資にのっとられた独占企業の社員になる以外にまともな職のない韓国のような状況になってしまっても、同じことを言い続けることができるでしょうか。
また、税金、健康保険料、年金、光熱費、教育費と、なにかと現金収入を必要とされる環境では、生活設計を立てるにあたって条件が厳しくなることも事実です。
自己啓発を続けるだけでなく、権力について知り、文明について分析することも行わなければ、結局は、仕事を得るために大きな犠牲を払い、得た仕事にしがみつかざるをえない方向に社会が進んでいくだけなのではないでしょうか。
本書の内容から
一寸、あなたの廻りの人達を見て下さい。自分のやりたいことをやっている人達は大抵他の人にもよく尽くしているし、やりたくない仕事をやっている人達は利己的で、みみっちくつきあいにくい。こんなことがよくわかるでしょう。 - 179ページ
さァ、あなたにとっても、やりたい仕事をやるのが一番大切だということがわかりましたネ、ヤリたい仕事をやりはじめたら、その瞬間から、自然にあなたはあなたの人生計画をよくしようという気になり、自分自身をよくし、他人のために、自分を忘れて尽くすようになるのです。人生というものが急に明るくなりあなたはわれを忘れて尽くした人々の肩にかつがれて、希望の丘を上るのです。
そうです。
これが、イヤな仕事をやらないで生活する道なのです。 - 180ページ