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「ブラザー イーグル、シスター スカイ―酋長シアトルからのメッセージ」スーザン・ジェファーズ(著)、徳岡久生(翻訳)、中西敏夫(翻訳)(JULA出版局 1996年11月)

→目次など

■「われらは知っている、大地はわれらのものでなく、われらが大地のものであることを」■

この本には、1790年ごろに生れ、1866年になくなった、アメリカ北西部を領地としていたインディアンの酋長による言葉が収められています。インディアンたちの土地が白人たちによって奪われていく中で、この酋長が率いる集団もワシントン政府に土地をむりやり買い上げられるところでした。契約書にサインするために白人たちのテーブルに着いた酋長シアトルはメッセージを残しました。そのメッセージは何度も訳され、書き改められてきました。この絵本の元になった文章もまたこの絵本のために書きかえられているとのことです。

絵本から言葉を拾ってみましょう。

母は、わたしにこんな話をした。
この大地にあるものはみな、わたしたちにとって神聖です。

「神聖」という言葉は、インディアンたちが信じていた精霊信仰となじまないように思います。抽象概念を使うことの難しさです。

父もいって聞かせます。

クマ、シカ、大ワシ、あれたちはわたしらの兄弟だよ。

身近に野生動物と接することのない私たちにこの言葉の真意は伝わって来るでしょうか。この兄弟は私たちと同じように感情を持ちながら獲物として肉になる相手であったりもします。

祖先たちの言葉も伝えられます。

遠い祖先たちの声は、わたしにこう語った。
小川や大川をきらめき流れていく水は、ただの水ではない、
おまえの祖父また祖父たちの血でもある。
祖先たちは、わたしにこう告げた。
われらは知っている、大地はわれらのものでなく、われらが大地のものであることを。

澄んだ水が命をつなぎ、命は自然界の法則に従うことでしか健全性を保てず、離反しようとすればやがて破綻していくことになります。

わたしたちは知っている。
血が人をつなぐように、すべての存在は網のように結ばれあっていることを。
人は、このいのちの網を織りだすことはできない。
人はわずかに網の一本の糸、だから、
いのちの網に対するどんな行為も、自分自身に対する行為となることを。

私たちが人の命を救うためにと森を切り開き食糧を増産すればどうなるのか。人命のために電力が必要だと主張して、自然界を大きく変えていけばどうなるのか。川を汚し空気を汚すことが体を汚す結果になり、細菌を排除すれば人の命も排除されていきます。道徳や倫理ばかりを叫べば生命力が失われていくことになります。私たちが従うべきは、人にとって都合のよい価値観ではなく、大地のものであるための法なのです。

この本の終りには植林をする白人親子の様子が描かれています。著者はまだ酋長の言葉の意味を知らないのかもしれません。酋長の言葉はおそらく深い意味を持ち、この本の著者スーザン・ジェファーズの理解をまだ越えていると私は推測しています。

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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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