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「悪夢の超特急―リニア中央新幹線」樫田秀樹 (著)(旬報社 2014年9月)

→目次など

■原発とリニア中央新幹線、その推進の仕方の類似から何を読み取ればよいのか■

リニア新幹線の問題点を指摘した本。

本書の「プロローグ」では、次の問題点が指摘されている。

・新幹線の三倍以上の電力を消費することから指摘される原発再稼働につながる可能性
・強力な電磁石の使用による電磁波の発生
・岐阜県では日本最大のウラン鉱床地帯にトンネルを開ける可能性
・三兆円の借金がある会社が九兆円もの事業に乗り出すという疑問。つまり資金ショートした場合の国民負担の可能性
・なぜ時速五〇〇キロでなければならないのか


これだけにとどまらず、帯に、南アルプスの天然水が枯れること、稜線に残土を積み上げること、町中を通る1日1700台のダンプ、48か所の直径30メートルの非常口・施設建設のための立ち退きも問題として挙げられている。

電磁波、ウラン、採算性など、詳しく説明されれば、いずれも、軽視できない問題であることがわかる。 問題の大きさをどのように判断するのかは個人によって異なるだろうが、原発と同じく、合理性のない事業であるという結論を出すことは容易にできるだけの情報が提示されている。 その点で、本書は十分評価できる本である。



ところで、形だけの住民説明会や、自治体にもデータを明らかにしない企業、追及することのない大手マスコミ、住民に厳しい裁判所など、原発やリニアに限らずさまざま事業で同じ構図が繰り返される理由は何であろうか。 残念ながら、本書ではそこまでの踏み込みはない。むしろ、企業批判、民主主義の未成熟などを印象付ける記述に終わっており、その点では残念の一言に尽きる内容になっている。

たとえば、JR東海を登場させた国鉄分割民営化からの流れを見ると、ブレントン・ウッズ会議と構造調整プログラムで述べられている、国家の経営権を奪う仕組みと符合していることがわかってくる。 リンク切れが発生するといけないので、リンク先を引用しておこう。

構造調整プログラムの内容は次のようなものである。
・緊縮財政(医療、教育、福祉、保険、環境整備予算の削減、あるいは公務員の解雇、賃下げ)
・付加価値税などの増税
・公的企業の民営化(教育機関や医療機関も含む)
・生産性や外貨を向上させる産業の促進(森林伐採、ダム建設、換金作物と呼ばれるコーヒー、ココア、サトウキビ栽培など)
・高金利や通貨切り下げ
・各種規制緩和を始めとする、金融、投資、貿易の自由化
つまりは、
・医療、教育、福祉などの補助や環境保護、公的サービスを切り詰めて借金を返済させる。
・増税して国民からお金を集め借金を返済させる。
・利益をあげられるような公的部門は売却して、その収入で借金を返済させる。
・自然を外国企業に売って借金を返済させる。
・自国民が食べる食料をつくるのをやめさせ、外貨が稼げる換金作物をつくらせ、それを外国に売って借金を返済させる。借金の返済は、ドル、ユーロ、ポンド、円など、国際市場で他国の通貨と自由に交換出来るハードカレンシーでおこなわなければならないので、外貨獲得のため、唯一外貨を稼げる一次産品を生産・販売することになる。そうするとさらに価格は暴落。それでも借金は返済しなければならないのでダンピングして輸出する。こうして、食べ物を作っているにもかかわらず、その作っている人が飢えて死ぬという「飢餓輸出」と言われる現象が起こった。
・通貨の価値を下げ、輸出を増やし輸入を減らして貿易黒字にし、その黒字で借金を返済させる。しかし、通貨を切り下げると、自動的に借金は何倍にも膨らむのである。こうして途上国は借金地獄へと落ちて行く。
・そして、規制緩和して多国籍企業が参入しやすい環境を整える。
このような政策を強要され、途上国は再び債務という鎖に繋がれた奴隷と化した。

実は語らない企業、追及しないマスコミ、合理性を欠くプロジェクトの推進には、このような動きがあると考えるほうが理解しやすいかもしれないのである。

内容の紹介


「生活環境中電磁界による小児の健康リスク評価に関する研究」と題する調査報告書がある。 これは一九九九年度から三年間、電磁波を疫学研究した国立環境研究所の(かぶと)真徳研究員(故人)が中心となってまとめ、「四ミリガウス以上の電磁波に被爆すると小児白血病の発病率が二・七三倍、小児脳腫瘍は一〇・六倍になる」との研究結果を出したものだ。 - 110ページ


ウラン鉱床
  リニア計画ではさまざまな問題が予想されているが、岐阜県には特有の問題がある。 それは「脱原発」や「震災がれき受け入れ反対」に携わっている全国の人にこそ知ってもらいたい問題だ。
  残土問題だけでもこれだけ悩ましいが、それが放射能汚染されているとなれば話はよりやっかいになる。 - 130ページ

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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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