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「愛は化学物質だった!? 脳の回路にオキシトシンを放出すればすべてはハッピー」
スーザン・クチンンスカス(著)白澤卓二(監修)爲清勝彦(訳)(ヒカルランド 2014年2月)

→目次など

■幼児期の愛の重要性と生涯の身体接触の重要性■

そらとことりと森のうたで知った本です。
とても良い本です。

特に、心の悩みを抱えている人、子育てに悩んでいる人、対人関係で失敗しがちな人にとって貴重な情報が含まれています(私自身も該当します)。

本書の内容は、子どもをとても大切にし、出産間隔を長くとる人びと(江戸の日本、アマゾンの原住民、カラハリのサン、さらにはチンパンジー)に通じるところがあり、チンパンジーの近縁であるボノボやカラハリのサンなど、身体接触の多い生活を送る人々が平和的であるという点を裏付けるものでもありました。
また、『本当は恐ろしい動物の子育て』において、愛情を注ぐことのできる環境を作るためにあえて残酷とも言える行動を取るという点にもつながる内容でした。

私自身も、兼業農家の三人兄弟の真ん中で兄と23か月違いという短い間隔で生まれたことも一因となって、乳児期にオキシトシン反応が十分発達しなかったように思います。幸い、オキシトシンの放出を更新・強化する方法も本書で説明されているので、今後、参考にしたいと思います。
また、他者と触れ合いたい、子どもを大切に育てたいという自然な気持ちを、ともすれば犯罪行為と呼んだり、経済的事情の前に不可能にしたりする現代社会のあり方を見直す意味でもよい本だと思います。

本書は出版社の関係もあって、見逃されがちな本ですが、とても重要な本の一冊だと思います。一読をお勧めします。

■特に面白いなと思った部分■


・生後3年間に受けた愛で愛し方を学ぶ私たち

しかし、わたしたちの生化学的配管は愛と友情の深い絆に対応していますが、生まれつき発達したオキシトシン反応を備えているわけではありません。わたしたちはあらかじめ愛するようにはできていないのです。どのように愛するか学ぶ必要があります。人生の最初の3年間で何があったか、特にどのような養育を受けたかが、残りの人生におけるオキシトシン反応を形成します。つまり、「愛し方」が方向付けられるのです。 - 40ページ


・言語能力の発達しない生後3年までに情動面はできあがる

脳の理性的・分析的な半分である左半球が本格的に稼働し、わたしたちの自意識が目覚める頃までに、わたしたちの世界観、そしてさらに重要なことに、他者を愛と満足感の源として見るかどうかを決める脳の構造はすでに形成されています。たとえば、幼児は、自分が知っていて敬愛している祖父と動物園で楽しい時間を過ごすことができますが、大きくなるとそうして遊びに行ったことの意識的な記憶はありません。にもかかわらず、祖父のことを信頼できる愛と喜びの源として認識するとともに、綿菓子の匂いが言葉に言い表せない喜びの感情を誘発することがあります。 - 67ページ


・大切な食と腸

腸にはオキシトシンなど脳にあるすべての化学物質の受容体があふれています。また、腸は、それ自体、内分泌物の重要な生成器官で、脳がメッセージを伝達するときに使う化学物質(セロトニン、オキシトシンなど)と同じものを送り出しています ([引用者注:参考文献あり])。メルボルン大学の細胞生物学のジョン・ファーネス教授は、腸の内面は外界に開かれている最大の体面積だと指摘しています([引用者注:参考文献あり])。よじれ、畳み込み、突起により、腸の表面は皮膚よりもはるかに大きくなっています。どうりで食べることで大きな満足を得られるわけです。 - 229ページ


・ひとだすけは快感

私もそうですが、独力で耐え抜こうとするタイプの人々は、自分の問題のために他人に負担をかけるのは間違っていると感じてしまいます。「私が完璧でないことがわかったら、彼女に嫌われるだろう」「私が助けを求めたら、彼は当惑するだろう」「押し付けるのは嫌い」と考えてしまいます。情動面の高揚のために他人の世話になることが自然にできなくとも、オキシトシン反応を理解しておけばこうした不安を取り除くことができます。健康的な人は、他人を助けるのが好きです。誰かを助けることで、その人自身のオキシトシンが上昇するからです。そしてそのために、人を助けることがさらに好きになります。 - 248-249ページ



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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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