弁護士(ホーム)不動産の法律相談
2015.5.10mf更新
弁護士河原崎弘

土地の時効取得の対抗要件として登記が必要

相談:不動産

祖父は、2000年に、それまで借りていた畑を買いました。以後、この土地を、祖父(3年前に亡くなりました。)、祖父亡き後は、父が使用してきました。
最近、付近一帯を測量して、当時、買った畑に、第三者(Aさん)の隣地一部(約100坪)が入っていることがわかりました。売買した当時は、売主も、祖父も、三者とも、これに気が付きませんでした。
Aさんからは、土地を買い取って欲しいと言ってきています。父は、取得時効で所有権を取得していると考えています。私も法律書を読むと、父の言っていることが正しいと思えるのですが、時効取得にも、対抗要件として登記が必要という人がいます。何か不安があるのですが、どうしたらよいでしょうか。

回答

取得時効

お父さんは、この場合土地の所有権を時効取得したと考えていいと思います。
10年あるいは20年間土地を継続して占有した場合、土地の所有権を時効により取得できます(民法162条)。
時効取得するには所有の意思が必要です。これは外観上で判断します。内心に所有する意思があっても、他人の土地を借りている人には所有の意思があるとは判断されません。お父さんの場合は、2000年に土地を買ったときに所有の意思があったと考えてよいです。
このようなケースでは、占有の初めに善意無過失と考えられますので、10年で時効取得します。お父さんは2010年に所有権を取得しています。

登記

時効取得と登記の関係は、第三者の登記がいつであるかによって、結論が変わってきます。 時効完成後は、下記図のように、時効により土地の所有権を取得した人を、買主と同様に、取引により所有権を取得した人(二重売買の買主)と考えるのです。従って、時効による不動産の取得にも対抗要件として登記が必要です。

元の所有者 →   時効取得者
買主

Aさんが、2010年以降(時効完成後)に、この土地を売り、買主が登記すると、あなたのお父さんの取得した所有権は否定されます(時効が中断される)。

仮処分

現在は、時効完成後ですから、用心が必要です。そこで、お父さんが取得時効を主張する際には、用心のために、事前に、弁護士に依頼し、裁判所においてAさんを相手に、土地の処分禁止の仮処分決定を得ることが必要でしょう。裁判所は、仮処分と同時に嘱託登記をします。
仮処分の登記ができると時効取得者に対抗要件が備わります。その後、Aさんと交渉するなり、裁判するなりすればよいです。

判決


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