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2024.5.31 mf
弁護士河原崎弘
架空請求詐欺サイト/ワンクリック詐欺
相談1:詐欺サイトに住所などを知られたらしい
インターネットで、無料サイトを見ていました。そのサイトは、見る際に、電話番号などを入力するようになっています。ところが、突然、「登録されました。期日までにお金を振込んでください」との文章が出てきて、振込口座が書いてあり、さらに、「未納の場合は弁護士を通じ連絡が行きます」とありました。
その後、私の携帯に何度も料金請求の電話が執拗にかかります。
私の住所がわかってしまい、自宅まで請求にくるのではと心配です。対処法はありますか。
相談者は、電話無料相談 を受けました。
Windowsセキュリティシステムが破損しています
相談2:サイトに登録された
アダルトサイトを見ていました。ところが、突然、「登録されました。期日までに6万円振込んでください。3日以内に振込めば3万円です」との文章が出てきて、振込口座が書いてあり、私のパソコンのIPアドレスも書いてありました。困るのは、裸の女性の写真がパソコン表示され、消すことができないことです。
私の身元が知られたのでしょうか。振込むべきでしょうか。
相談3:マイクロソフトの表示がされ、ブラウザを終了できない
「マイクロソフトセキュリティアラーム
Windowsセキュリティシステムが破損しています
システムが3個のウイルスに感染しています。Windows PCが感染: 3 ウイルス。セキュリティが 2 マルウェアと 1 フィッシング詐欺/スパイウェアの痕跡を見つけました。
Virus found Microsoft」とMicrosoftの警告が表示され、ページを消せません。移動することもできません。
回答:放置する対処が良い
これは、最近多い、架空請求詐欺サイトです。架空請求に対しては、何もしない、放置することが原則です。あなたの場合も、
放置して、 大丈夫です。
携帯電話の番号から、住所、氏名を調べることはしないでしょう。
アダルトサイトを見て、やはり、架空請求をされたケースが多いです。本人は、若干、後ろめたい気持ちがあり、1人で悩み、お金を振り込む場合があります。しかし、振り込むと、相手は、さらに、お金を請求してくるのが、通例です。
アダルトサイトを見ても、他人に迷惑をかけたわけではありません。弁護士、消費生活センター、信頼できる友人に相談してください。そうすれば、冷静な判断ができます。警視庁などでも、業者に連絡しないよう、お金を振込まないよう
アドバイスをしています。
相談者の場合は、知らないうちに、契約成立になったようです。このような場合、民法では、錯誤で、契約は取消できます(改正前の民法では無効)。ただ、例外として重過失があると、無効を主張できません。相談者に重過失があることはないでしょう。
本件では、突然、「登録されました」との画面が出てきています。その前に、確認画面が出ていません。このような場合は、電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(平成13年6月29日法律第95号)により、契約は取消を主張できます。相談者は、法律上も保護されています。
裁判所も、このような事例には、業者に対し、厳しい態度で臨んでいます。振り込んでしまった人が、弁護士に依頼して、指定口座の名義人、脅迫などに使用された携帯電話の契約名義人、脅迫などに使用された携帯電話の契約者であったレンタル会社、および、同社の取締役に対し、共同不法行為を理由に、損害賠償を請求した裁判がありました。この裁判では、裁判所は、指定口座の名義人、レンタル会社の責任を認めました。
パソコン上に残った料金請求画面ないし裸の画面
を消す方法は次の通りです。
- システムの復元をする。
タスクバーの左下方にある「WebとWindowsを検索」というフォームに「復元ポイント」と入力し、「復元ポイントの作成」をクリックする。
- 駆除ツールを使う。
- 「ファイル名を指定して実行」で、「msconfig」と打ち、スタートアップタブを開き、「mshta」や「www」、「http」で始まるプログラムをはずす。
- 「ファイル名を指定して実行」で、「regedit」と打ち
、レジストリを編集し、「mshta.exe」あるいは「hta」ファイルをはずす。
下記ページを参考にしてください。自己責任ですが。
Microsoftのページは、偽ページです。これも詐欺サイトです。
詐欺サイトのページを消えない場合は、次の方法で消します。
[ウィンドウズマークを右クリック] → [タスクマネジャーをクリック] → [終了したいブラウザを選び右クリック] → [タスクの終了をクリック]
判例
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東京地方裁判所平成18年1月30日判決(判例時報1939号52頁)
本件は、相手方に契約締結意思がないにもかかわらず、サイトの画面の写真画像をクリックしただけで、会員登録が終了したとして
不当に利用料金を請求する、いわゆるワンクリック詐欺による不当請求事案であるが、その手口は、いきなり画面を暗転させ数字や文
字を羅列させた後、個人情報取得終了との表示を行い、いかにも相手方のパソコン内にスパイウェアを侵入させ個人情報を窃取したか
のような不安感を与えつつ、IPアドレスによってパソコンが特定でき、自宅や勤務先に直接請求するとともに、延滞料も請求するこ
とがあるなどと威圧的に請求を行うもので、しかも、羞恥心から泣き寝入りし、支払いに応じる者もあることを見込んでランダムに多
数のメールを送りつけるというものであって、極めて悪質である。
原告は、弁護士であり、かかる請求に対して支払義務のないことは
理解してはいたが、自らのパソコンにスパイウェアを侵入され、またパソコン内の個人情報を窃取されたかもしれないとの懸念を抱き、
パソコンの点検が済むまでの間パソコンの利用を差し控えたほか、自らの権利救済のために時間と費用をかけて本訴を提起しており、
被告の行為により看過し難い精神的苦痛を負ったことは明らかである。
本件に関する上記のような諸般の事情を総合勘案すると、本件
における損害賠償金として30万円が相当であると思料する。
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京都地裁平成17年10月26日判決
(2)(被告乙山の不法行為の成否)
被告乙山は、本件の架空請求詐欺に関与していないと主張し、同被告本人尋問の結果中には、本件口座は、同被告が知人から依頼されて、利用目的も知らないまま、自己の名義で開設し、対価として5,000円を受け取ったに過ぎない旨の供述部分が存在する。しかしながら、同供述内容は不自然かつ不合理であって、そのままには措信し難く、自己名義の口座が架空請求詐欺のような不正行為に利用されることは少なくとも未必的に認識。
したがって、被告乙山は、タカギによる本件の架空請求詐欺に加担したものとして、民法719条の共同不法行為が成立し、原告が被った損害を賠償する義務を負う。
そこで次に、過失責任について検討するに、確かに、被告会社主張のとおり、本件当時は未だプリペイド携帯電話の業界においても、契約者の本人確認に関する自主規制が行われていなかったことが認められるけれども、他方、《証拠略》によれば、平成16年8月当時、既に、携帯電話を利用した架空請求詐欺を始めとする犯罪が蔓延し、社会問題化していたことが認められる。
このような状況下においては、携帯電話事業により収益を得ている事業者としては、当該携帯電話事業が犯罪遂行手段を確保し、犯罪行為を援助、助長することのないよう、販売・レンタル等の営業方法について適正を期する義務を負うというべきある。
これを本件についてみると、前記のとおり、被害会社は、本来匿名による取引を予定していない携帯電話レンタル契約に際し、「山本」とのみ名乗り、名前及び住所を明らかにしない顧客に対して、漫然と携帯電話のレンタルを行い、当該携帯電話が、タカギによる不法行為の遂行のための必須の手段として用いられていることが認められ、このような場合には、被告会社は、顧客の住所氏名を確認すべき注意義務に違反し、タカギの不法行為に加担したものとして、民法719条により原告が被った損害を賠償すべき義務を負うと解するのが相当である(判例時報1919-132)。
法律
電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律第3条
(電子消費者契約に関する民法 の特例)
第3条 民法第95条 ただし書の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その電子消費者契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤が次のいずれかに該当するときは、適用しない。ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない。
一 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。
二 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。
港区虎ノ門3丁目18-12-301 弁護士河原崎法律事務所 03-3431-7161
登録 2006.4.24