相続放棄を詐害行為として債権者が取消できるか
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2015.9.28mf
質問
私は、頼まれて古い友人の連帯保証人になりました。友人が支払をしないので、私が金融機関に約1000万円を支払う羽目になりました。
その後、友人の父親が亡くなりました。私は、相続財産(不動産および預金)で支払ってくれるものと思っていましたが、友人は相続放棄しました。友人の母親および弟が自宅の土地・建物(約4000万円)を相続し、登記をしました。友人は、その家に住み続けているのです。
友人は、何か、法律を悪用している感じがします。友人の行為は詐害行為に当たり、私は相続放棄を取消できないのでしょうか。
相談者は、市役所の法律相談所で、弁護士の意見を聴きました。
回答
詐害行為取消の対象となる行為は、財産権を目的とする法律行為です。債務者の法律行為のうち、財産権を目的としない法律行為は詐害行為取消権の対象となりません(民法424条2項)。身分行為、すなわち、婚姻、養子縁組、相続の承認、放棄 などは、詐害行為取消権の対象となりません。
似た例として遺産分割協議があります。遺産分割協議は詐害行為として取消 できます。家の名義書き換えは、遺産分割協議でもできます。
相続放棄を使ったのか、遺産分割協議を使ったのかは、登記申請の際の申請書類を調べるとわかります。
登記所(法務局)で調べるとよいでしょう。
判決
- 最高裁判所昭和49年9月20日判決(出典:金融・商事判例429号9頁)
相続の放棄のような身分行為については、民法424条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。
なん
となれば、右取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨
げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は、相続人の意思からいつても、また法律上の効果からいつて
も、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当で
ある。
また、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によつてこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の
放棄を詐害行為として取り消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であるこ
とは明らかである。
2004.10.17
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