遺産分割協議を詐害行為として取消せるか
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2015.7.25mf更新
弁護士河原崎弘
相談:借金の取立てを免れるために、相続分をゼロとした
平成14年4月から12月にかけて、私は、合計4000万円を、知人に貸しました。知人の父親はビルを所有しており、
他に兄弟は2人いますが、将来、知人が相続する遺産は2億円以上の価値があると聞いていたからです。
昨年、知人の父親が死亡しました。知人からの何の連絡もなく、私は、貸金の返済請求を何度もしましたが、返済はありませんでした。
最近、
登記所(法務局)で、ビルの所有者を調べましたところ、知人は相続してなく、母親と兄弟(2人)が相続していました。
私は、知人から「ビルを相続したら、返済するから」と頼まれて、貸したのです。
知人は、周囲に対して、「債務の支払いを免れるため、
遺産分割協議では自分は相続分をゼロとした。時期がきたら、ビルの一部の持分をもらうことになっている」と言っているそうです。
私は、何らの法的措置をとれないのでしょうか。
回答:詐害行為として遺産分割協議を取消できる
市役所の法律相談室の弁護士は、次のように説明してくれました。
遺産分割協議で相続取得分をゼロとすることにより、本人(債務者)が無資力となるなら、この内容の本件分割協議は、債権者の債権を害する詐害行為(民法424条)です。債権者はこれを取消すことができます。
取消した場合は、債務者(知人)は法定相続分である1/6を取得することになり、相談者は、1/6の持分を差押えることができます。詐害行為取消は訴訟で行う必要があります。
なお、似た例に相続放棄があります。相続放棄は、詐害行為取消の対象になりません 。
判例
- 最高裁判所平成11年6月11日判決(出典:判例タイムズ1008号117頁)
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。
けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単
独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目
的とする法律行為であるということができるからである。
そうすると、前記の事実関係の下で、被上告人は本件遺産分割協議を詐
害行為として取り消すことができるとした原審の判断は、正当として是認することができる。
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