前回に続いての 平ヶ岳登山である。
私としては 2回連続で同じ山域に登ることはあっても、同じ山に登ることは滅多にないのだが、前回の平ヶ岳があまりにも悲惨であったことから、 晴天が期待できると思われたこの 10月7日に再度平ヶ岳に挑戦することにしたのであった。
昨年の今頃、同じ地域にある 会津駒ヶ岳に登って、 雲 1つない晴天の下、錦秋の山を大いに楽しんだのであったが、 その時の記憶がこの時期に再度平ヶ岳に向かわせることになった要因の 1つであるのは間違いないところである。前回は 午前 3時15分に起きて、家を出たのが午前 3時40分。 途中の高速道路パーキングエリアで休憩をとったこともあって、平ヶ岳登山口の駐車場に着いたのは 8時7分と遅く、 平ヶ岳を往復して戻ってきたのが 17時丁度であったのだが、あれから 1ヶ月以上経過した現在では日の暮れるのも早くなっているのは間違いなく、 できるだけ早く出発したいと考え、今回は午前 2時40分に起床したのであった。
それに、前回は高速道路をかなりのスピードで飛ばすことができたのだが、今回は新車であるためエンジンの回転数をできるだけ押さえて走るようにしなければならず、 あまりスピードを出せないことも考慮してのことである。まだ真っ暗な中、3時10分に家を出発し、東名高速道、首都高速、外環道を経て順調に東北自動車道に入り、 いつも通り西那須野塩原ICで降りて国道400号線へと入った。この道も既に 5回目となりもう手慣れたものである。
天候は間違いなく晴天で、フロントガラス越しに広がる青空に本日の登山に対する期待感が大いに高まったのであったが、 国道121号線から国道352号線に入り、会津高原駅前を通過する頃から濃いガスが出始め、周囲の景色も全く見えなくなってしまったのには、 些かやきもきさせられたのであった。
しかし、それも内川の丁字路を左折して檜枝岐村に向かう頃には再び雲一つない青空が広がるようになり、 七入から山道に入る頃には完全に本日が終日晴天であることを確信したのであった。平ヶ岳登山口に着いたのが、7時44分。
前回は空きが目立った駐車場も今回は道路反対側の予備駐車場も含めてほぼ満杯の状態である。
幸いにも前回と同じ、駐車場の一番端に空きがあったので車を止め、はやる心を抑えながら出発したのが 7時50分であった。駐車場横の、車が入れないようにロープが張ってある林道に入り、下台倉沢を渡って山の取り付き口に着いたのが 8時丁度、 前回と同じペースである。
杉の林を抜けて登りに掛かると、早速 6、7人のグループを追い抜くことになった。全員大きく重そうなリュックを背負っており、 頂上でテント泊をするつもりなのであろう。
また、例の下台倉山へと続く長い尾根道に入っても、仰ぎ見れば何人かの人々が先を行くのが見え、 3連休の初日、多くの人々がこの山を目指していることが分かる。この日は青い空に気分も高揚していたためであろうか、長い登りもほとんど休憩することなく登り続けることができ、 お陰で尾根上で 10人弱の人達を追い抜くことができたのであった。
前回は緑一色であった山も、今回は赤や黄色、緑に彩られてすっかり秋の山に変わっており、 山頂の景色を期待して気分はますます盛り上がっていく。
下台倉山に着いたのが 9時17分。振り返れば 燧ヶ岳の双耳峰が堂々と聳えているのが見え、 その左方にはなだらかな山並みの中に一ヶ所だけ突起を見せた 会津駒ヶ岳の姿も見える。5分ほど休憩した後、左側が開けて見通しの良い道を快調に進む。
前回はマムシが目の前を通ってビックリさせられた箇所も、今回はその影さえも見えず、ホッと一安心である。
台倉山に着いたのが 9時59分。この尾根道でも 3人ほど抜かさせてもらった。
本当に身体が快調である。
この台倉山付近の道は、前回は干上がって何の問題もなかったのだが、今回はかなりぬかるんでおり、 以降、池ノ岳への登りに取り付くまで至る所にぬかるみがあって悩まされることになった。台倉清水に着いたのが 10時7分。今回はそのまま休まずに通過である。
起伏を越え白沢清水に着いたのが 10時36分。ぬかるみが多いのは数日前に降った雨のためと思われ、 従ってこの白沢清水でも水が湧き出しているかと期待したのだが、今回も水溜まり同然の姿で少々ガッカリであった。
握り飯を 1つ食べ、7分ほど休憩した後、木道を進んで行くと、やがて先の方に笹の斜面が割れたように見える池ノ岳への登りが見え始めた。
前回はここを傘を差しながら登ったのであるが、本日は晴天のもと、周囲の紅葉を楽しむ余裕まである。笹原を登り切り、岩稜地帯に出ると、左手に平ヶ岳の丸い姿が見えてくる。
そしてさらにその左には前回見ることができなかった 至仏山の三角錐も見える。
やはり登山は晴天に限る。さて、平ヶ岳はどう見ても丸い山容である。なのに何故平ヶ岳と呼ぶのか、これは前回も感じた疑問であったが、 その答えはさらに先に行って理解できたのであった (後述)。
岩の間を登る最後の登りはさすがにきつく感じられるが、もう頂上の一角が近いことを知っているため、 それ程苦にならない。
やがて岩場を過ぎると木道が続く頂上の一角に飛び出し、木道を足早に進めば、すぐに目の前に姫ノ池が広がる池ノ岳頂上であった (11時38分)。
今回は目の前に広がる姫ノ池と紅葉の平ヶ岳がなかなか良い構図で迎えてくれた。こういう時は本当に幸せを感じる。ここでも水で喉を潤しただけでほとんど休まずにすぐに平ヶ岳へと向かった (11時43分発)。
前回は雨とガスと強い風の中、先が見えずに大変苦痛であった栂の林 (ツガ廊下というそうである) も、 今回は全く快調に抜け、すぐに木道が連なる平ヶ岳の頂上湿原の一角に飛び出したのであった。
ここから見る 燧ヶ岳も立派である。
木道をほんの少し進めば、やがて平ヶ岳の三角点で、時刻は 12時4分。
前回が 12時55分着であったから、今回は頂上散策の余裕もありそうである。前回は雨のため撮ることができなかった記念写真を、三角点前の標識を入れて数枚撮り、 後は木道に腰掛け、燧ヶ岳を眺めながらの昼食である。
昼食を済ませてからは荷物をそのまま置いてカメラだけ持ち、三角点よりさらに先に連なる木道を進んだ。
私の持っている昭文社の地図では、三角点が 2,139.6m となっており、さらにその先に 2,141m という場所があるように見えるので、 前回 三角点だけで Uターンしたのを少し悔やんでいたのだが、今回はこの問題も解決である。三角点より先は、広々とした草原といった感じの湿原が広がっており、 高い木が全くないので周囲を良く見渡すことができた。
特に北側は、谷を隔ててたまご石を見ることができ、さらにその向こうには荒沢岳や中岳、そして 越後駒ヶ岳を見ることができたのであった。本当に素晴らしい景色である。
なお、木道は途中で終点となっていたが、実際は剱ヶ倉山、滝が倉山へと辿れそうであった。
頂上付近には 4人ほどしかおらず、しかもこちらの三角点より先に来る人は1人しかいなかったことから、 山や景色を独り占めした感じで大変良い気分であった。荷物を置いた場所まで戻り出発したのが 12時29分。
今度は再びツガ廊下を抜けて途中で左折し、たまご石へと向かった。
水場、テント場を過ぎたが、テントはまだ一張りしかなく、それもその主は先ほど池ノ岳の中腹で私が追い抜いた人であった。
ところで、見た限りでは、それほどテントを張る場所も見あたらず、ここに到達するまでに私が追い抜いた 30人弱の人達は、 本当に全員テントが指定場所に張れるのかやや疑問を抱いた次第である。テント場の先にある分岐から木道を左に折れる。
左手には先ほどまで楽しんだ平ヶ岳が本当に平たく見える。この平ヶ岳は小判型をした栗饅頭のような形をしているらしく、 見る方向によっては丸く見え、また違う方向から見たらその頂上は平らに見えるという訳である。
これで平ヶ岳という名も納得である。たまご石に着いたのは 12時55分。
念願の池塘もたまご石の後ろに見え、大満足である。しかも、たまご石には誰もおらず、 たまご石手前の大きな石に座って周囲の自然を満喫したのであった。さて、たまご石を写真にたっぷり納めた後は、湿原を回って池ノ岳へと戻り、ひたすら往路を戻るだけである。
たまご石を出発したのが 13時7分。もう少し居たかったのだが、秋の日はつるべ落としということを考えるとそれ程ゆっくりはしていられない。下りも快調に、ほとんど休まず飛ばしたお陰で、駐車場に着いたのは 16時15分であった。
とは言え、さすがに下台倉山からの尾根道下りは苦痛で、このコースがいかにロングであるかを思い知らされた次第である。
しかし、前回の雨中、霧中の平ヶ岳に比べて、今回は何と充実した登山であったことであろう。
本当に満足いく登山であった。
最後までその双耳峰を見せてくれていた燧ヶ岳に未練が残ったものの (燧ヶ岳に登った時もガスの中であった)、 これでこの地域はもう卒業であろう。
本当に素晴らしい山域である。ところで、下りでもかなりの登山者が登ってくるのに出会った。
それも、台倉山 (14時33分着)以降に出会った人が 5人ほどいたのだが、 彼らはどこにテントを張るつもりなのであろうか。
せっかくの充実した山行であったのに、何となく登山者のモラル (登る時間帯も含め) が気にかかったのが唯一残念な点であった。
平ヶ岳再登山データ
上記登山のデータ 登山日:2000.10.07 天候:快晴 単独行 日帰り 登山路:平ヶ岳登山口−下台倉山−台倉山−台倉清水−白沢清水−池ノ岳−平ヶ岳−(山頂散策)−玉子石− 池ノ岳−白沢清水−台倉清水−台倉山−下台倉山−平ヶ岳登山口 交通往路:瀬谷−横浜IC−(東名高速道)−用賀料金所−(首都高速)−川口JCT−浦和IC−(東北自動車道)− 西那須野塩原IC−塩原温泉−檜枝岐村−平ヶ岳登山口 (車にて) 交通復路平ヶ岳登山口−檜枝岐村−塩原温泉−西那須野塩原IC−(東北自動車道)−浦和IC−(外環道・首都高速・東名高速道路)−横浜IC−瀬谷 (車にて)