NO.007 由布岳( 由布岳:1,584m ) 1993.3.20登山


 正面登山口から見た由布岳( 1993.3.20 )
【由布岳について】

【由布岳登山データ】

フォト


由布岳について

私が宮崎に単身赴任中に登った九州の山の中で、一番美しい山をあげよ と言われたら、 この由布岳を第一に推すであろう。
私が登った時は冬であったが、正面登山口に立つと冬枯れの草原の向こうに、スッキリとした由布岳の姿が青空に映えており、 麓の樹林帯の黒に近い緑と、中腹の枯れた草木によるベージュ色、そして双耳峰の頂上に残る雪の白とが、 地味ではあるが美しいコントラストを描いていて、その素晴らしさに思わず息をのんだのを覚えている。
この欄に掲げた写真の出来はあまりよくないので、その素晴らしさをお伝えできないのが残念だが、実物は数十倍素晴らしく、 また、ガイドブックの写真などで見ると、山全体が緑に包まれた春の由布岳も一見の価値があるようである。

正面登山口へ行くのに、私は別府からタクシーを使ったが、別府や大分からバスも出ているようであることから、 車を使ったピストン登山はやめて是非とも山全体を楽しんで欲しいと思う。
トイレなどが完備した正面登山口からは、九州横断道路を渡って牧草地のような草原の中を進むことになるが、 正面に由布岳を見ながら大変気持ちの良い歩きができるところである。
草原を緩やかに登って行くとやがて樹林帯に入る。
この樹林帯は倒木などがあって少し荒れた状態になっており、草原の気持ちよさに比べて少し暗い感じがするかもしれない (これは前年の台風のせいだったのだろうか ? )

やがて、谷を渡って少し登ると合野越 (ゴウヤゴシ) と呼ばれる草地に出るが、 ここは由布岳の寄生火山である飯盛ヶ城との鞍部であり、また、西登山口からの道との合流点にもなっており、一休みするには格好の場所である。
合野越を過ぎると灌木の中をジグザグ登ることになるものの、すぐに抜けることになり、やがて一面ススキの山腹をジグザグに登ることになる。
登るにつれて展望も開けてくるから、高度を稼いでいることが実感できるのだが、私が登った時には、 先ほどの九州横断道路を挟んだ反対側で野焼きが行われており、チラチラ見えるオレンジ色の炎と白い煙、そして燃えたあと黒くなっていく山肌が見え、 春が近いことを感じさせてくれてなかなかよかったのだった。

山道はジグザグ状態がずっと続いているが、ほとんどススキだけの山腹であるから、 自分の登る道とともに、登ってきた道もよく見えるので、目標と成果が分かって大変励みになる。
やがて、見上げると山頂の双耳峰が見えてくるようになり、最後少し急な坂を登ると双耳峰の鞍部である マタエに着く。
私が登った時は、ここから完全に残雪の道となり、噴火口などは完全に雪に覆われていて、木々には霧氷が付着しているなど冬そのものであり、 今まで登ってきた状況との格差に驚くばかりであった。

双耳峰はそれぞれ 東峰西峰と呼ばれていて、 どちらも短時間でその頂上に立つことができるが、登りやすいのは東峰の方で、その頂上からは鶴見岳や別府湾の眺めが良いはずである (と表現したのは、私が東峰頂上に立った時は、どういうわけかガスが出てきて展望をえられなかったからである)。
西峰の方は、岩場を越えた後、障子戸と呼ばれる岩壁を鎖を使って登ることになるためやや戸惑うが、それ程難しいわけではなく (とは言っても帰りに障子戸を下りる時、足場が見つからなくて少し困った)、こちらもすぐに頂上に立つことができる。

こちらの頂上には一等三角点補点があり、展望は抜群で眼下には湯布院 (駅名は由布院) の町並みがハッキリ見え、 そのはるか向こうには九重の山々を見ることができる。
暫し展望を楽しんだ後は、そのまま火口跡を回ってお鉢巡りをしてから下山することもできるようであるが、そこはかなり難路らしく、 私の場合は完全に火口の周囲が冬の世界であったので、お鉢巡りをする装備も勇気もなく、そのまま往路をマタエまで戻ったのだった。
マタエからは、合野越を通ってそのまま正面登山口へと往路を戻る手もあるが、車で来たのでなければ、是非ともここで紹介するように合野越から道を右にとり、 西登山口 (岳本) への道を進み、由布院温泉まで行くことをお薦めしたい。
合野越から草地の中を暫く下ると水場があり、やがて台 (デエ) と呼ばれる広い牧草地のような斜面を緩やかに下っていくことになる。
ここは広い草地に大きな岩がうまい具合に配置されていて、いかにも火山によってできた台地とはこういうものだということを学ばせてくれる。
そして、台地を吹き抜ける風が心地よく、また振り返る度に由布岳がその形を変えて見えるので、大変楽しく、気持ちよく歩けるだろう。

やがて林道にでるが、そこを左に下るのではなく、右に林道を少し登って、 途中から植林帯の中に入るのが正しく、この周辺は標識も粗末で大変分かりにくい。恐らく、今はまた様子が変わっているのではないかと思われる。
やがて道は杉林に変わり、その中を一気に下っていくと、民家の屋根が見えるようになり、すぐにコンクリートの道に出るので、 左に下って行けば九州横断道路に出ることになる。
そこからは右に進んで、すぐに左に道を折れ、まっすぐ由布院駅を目指せば良い。

私は途中で少し寄り道をして公衆の露天風呂に入って汗を流したたが、 風呂の中に浸かっていると、由布岳の頂上の一部が見え、何となく嬉しくなったのを覚えている。
由布院駅までの道は、若い人で溢れていて軽井沢のような雰囲気であり、登山姿で歩くのはやや場違いな感じがして気が引けるかもしれないが、 一方で由布岳の端正な姿を背中にして町を歩くのは誇らしく感じられるかもしれない。
正面登山口からの所要時間は、上記に述べたコースで 4時間半も見ておけば余裕十分で、正面登山口が既に標高 770mもあることから、 登山自体はそれ程キツイものではなく、短時間での登山が可能である。
しかし、前述したように、車などを使ってピストン登山をするよりは、是非とも台 (デエ) の方を歩き、 山の色々な側面を楽しんで欲しいと思う山である。


由 布 岳 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ 登山日:1993.3.20 天候:晴れ 単独行 日帰り
登山路:正面登山口(一軒茶屋前)−合野越− マタエ−由布岳東峰−マタエ−由布岳西峰−マタエ−合野越−台−岳本−岳本共同湯−由布院
交通往路:南宮崎−(日豊本線)−別府−(タクシー)−由布岳正面登山口
交通復路:由布院−(久大本線)−大分−(日豊本線)−南宮崎
温 泉:由布院温泉

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