登場当初は朱色一色という姿で、キハ45以来の両開き扉片側が2ヶ所・片運転台仕様のキハ47と、50系客車のように車端に幅広の片開き扉を持ち両運転台のキハ40、その寒冷地仕様のキハ48などがキハ40系グループの一員。
当初は冷房装置はなく、また将来の冷房化を前提にした冷房準備仕様でもなかったが、広いドア開口部に対応して大容量の温風暖房装置を持ち、室内循環ダクトまたは外気導入ダクトのいずれかでの急速暖房運転が可能だ。後に鹿児島工場がバス用クーラーを利用して全国で初めてキハ40系の冷房化改造した際には、この室内循環ダクトを活用して天井に新設したダクトから冷気を出すように工夫した。
走行装置に関しては、エンジンは戦前設計がルーツのDMH系機関からの脱却を目指し、長らく12系・14系客車の電源用エンジンとして使用されてきた6気筒15リッター級のエンジンを、余裕を持たせるため出力を440PSから半減させたものを採用したが、大型の車体に対してやや非力だったため、JR化後には各社で330〜360PS程度の新型エンジンに次々換装され走行性と経済性を高めている。
合わせて800両以上が製造され、JR化後も多数の車両が残っているが、近年は後継車両の登場やJR東海のように大量の(きれいで整備が行き届いている)キハ40系がミャンマーなど海外に譲渡されるなどして急速に両数を減らしているものの、まだもて余している状況だ。
そんな中、JR九州がキハ40系を観光列車「いさぶろう・しんぺい」や観光特急車両「はやとの風」に改装するなど観光列車のベース車両に抜擢すると、全国のJR各社でキハ40系車両の観光車両への改造が相次いだ。最新の「或る列車」に至っては、1両あたり約3億円ほどかけて改装した究極の観光列車だ。(1977年の新製価格は1両あたり0.7億円だった)
JR九州がキハ40系にかける情熱はおそらく、JR九州初代社長で国鉄時代末期に国鉄総裁に抜擢されるも固辞した経緯がある石井幸孝氏がディーゼル車両の技術者経験者で、キハ40系開発にも関わった経緯があるからかもしれない。そんな中2018年に、JR九州が長崎・大村線系のキハ66・67系の置換え用として新型電気式ディーゼル車両の開発を発表しており、キハ40系の置換えに影響する可能性も出てきた。
◆キハ47・147
暖地用の近郊タイプの車両。トイレ付きの0番台、トイレなしの1000番台のほか、寒冷地向けの500・1500番台(いずれも当初)もあった。寒地用は空気バネ仕様で、特急車両と比べ勝るとも劣らない優れた乗り心地が特徴だが、「或る列車」に改造されたうちの1両がこのグループから充当されている。
国鉄期末期の昭和59年前後に、鹿児島在籍車両は全車とも現在のような白地に青20号の帯という塗装に変更され、続いてキハ40系では全国初となる冷房改造が施工された。
またJR化後にはエンジン換装が行われ、神鋼製または新潟製の360PS機関に交換されたものがキハ147(後述)、コマツ製330PS機関に交換されたものがキハ47 8000(トイレあり)または9000番台(トイレなし)に改番されている。その後もワンマン化改造も受けて現在に至っている。前述のようにJR各社でも機関換装や車内仕様の変更、更新工事を期に多数の番台区分が出現しており、JR九州と東海に至っては再改番も行うなど、世界の鉄道車両の歴史上最もカオスな番台区分を持つ。
なお鹿児島には2018年現在もエンジン未交換の車両が数両存在する。
当線では基本2両組んで運用されており、増結で2+2になったりキハ40を増結して3両になったりしている。
◆キハ40・140
前述のように両運転台付きで片開き扉を車端に備える暖地用車両。鹿児島在籍車は全車暖地向け仕様でトイレ付きの2000番台(当初)だった。九州の他地区のラインナップでは500番台など寒冷地仕様もある。
塗装変更や冷房化、機関換装、ワンマン改造の経緯はキハ47と同じで、360PS機関のものがキハ140、300または330PSのものが8000番台に改番されている。1両で運転可能なことから当線では山川〜枕崎間に限り単行運転も見られるが、鹿児島中央〜山川で単行運転することはなくキハ40どうしの2連やキハ47に増結する場合が多い。なお日豊本線の国分方面にはキハ40の単行運転列車が複数設定されている。
330PS機関と360PS機関とでは数値の面で大差はないが、360PS機関の方が甲高い音がなくて騒音が低い。またこの機関は長崎・佐世保線で活躍するキハ66・67に対して機関換装されたのと同じ6気筒13リッター420PS級エンジンであるが、キハ40系の1軸駆動台車やラジエーターをそのまま流用する関係で、負荷と発熱を低く抑えるため前述の360PSとして使用している。このスペックから察すると1軸駆動の出力の上限は360PSとも考えられるが、(JR東海のカミンズ機関でも350PSとほぼ同じ)「ゆふいんの森」キハ70系中間車には1軸駆動のキハ58系ベースの車体にキハ200と同じ450PS機関が装備されたことから、何でもアリの状態になっている。
◆なぜ観光列車への改装に白羽の矢が立った?
一つの理由には、このキハ40系列車両が全国的に余ってきたことは想像に難くない。車両改造には長い期間が必要なため、長期間運用を離脱しても影響が少ない車種に限られる点が1つ。
もう一つの点は、皮肉にも国鉄設計による画一的・大量の製作が影響していると思われる。標準仕様と呼ばれるものがそれで、JR各社となってからも車両設計に「標準仕様」が存在するおかげで、標準の設計図から改造のための工程が場当たり的にならずに済むメリットがあったからだ。この点はJR西日本の担当者も同様のことを専門誌で述べており、「スーパー103系」なる更新車などが効率よく短期間で登場したのに標準仕様が貢献した。
さらには車体が耐侯性グレードの高張力鋼鈑(ハイテン鋼)で出来ていたことでもともと車体の腐食が経年の割に少なく、その車体強度を生かして「はやとの風」の天窓や「ビュースター風っこ」のトロッコ車のように大胆に大きな開口部を開けたりするのが可能だったこともある。
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