風のささやき

自転車に乗って

しっとりと潤んで冷たい
春の風の眩しさを正面から受け止めて
陽ざしを汗のように額に光らせて
子供たちは自転車のぺタル
勢い良く漕いで走る
まだ雪を残す田畑の合間を縫うように

用水路を流れる雪解けの水は
春の鼓動に勢いを増して
光をこの土地の隅々にまで
行きわたらせようとしている

何処かむせるような
懐かしい土のにおい
芽吹き始めた草の香り
顔を出した蕗の薹の
若々しい春の苦味の清新を
君たちもいつか
分かるようになるのかしら

また巡って来た
新しい季節の眩しい風景は
君たちの確かな養分となる

君たちはこの風景の色合いを
体一杯に吸い込んで
一瞬毎に君たちの体が
大きく膨らんで透明な力の鎧を纏う

自転車を漕ぐ君たちが
ペダルを踏む足にグイグイと力を入れると
冬の重力から解き放たれるように
面白いようにスピードが上がる

その後を追う僕との距離は
一挙に広がり遠ざかるその後ろ姿は
何処まで早く遠くに行くのだろう

それはとても頼もしくも寂しくて
僕はそのうち息切れをして
着いて行けなくなるのかな

君たちの見えている風景を
君たちは真っ直ぐに進め

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