風のささやき

一枚の絵に(街の風景に)

日傘を差している

この海辺の街に集うのは
あわただしくやって来て陽ざしを
浴びたい人ばかりのはずなのに

街が明るんでいれば良いのか
膨らんで行くような街の輪郭があれば良いのか

陽ざしが溢れすぎて取りこぼしてばかりで
もうそろそろ目が役割を果たさないから
色のついた眼鏡で風景を色づける

熱を肌に感じられれば良いのか
暖かな土地があることを信じられれば良いのか

椰子の葉が揺れている
日陰は勝手気ままな人々が集う場所
ゆっくりと潮風が遊んでいる
もうまとわりつかないで欲しいと
葉っぱがゆっくりと嫌がっている
長い女性の髪の毛がもつれている
少しだけ焼いた肌を癒してくれる

今日のパーティーの始まりは19時
波間には宵闇と夕日と星の瞬きが
バラバラにはめ込まれて
下手な人の手のように何度も迷い
その位置は置き換えられて行き

今日一日の出来事を誰に話そう
今日の日の体はどんな服装に包んで行こう

あの奥さんのこの前の服はいただけなかったわと
口に出しては思い描き
自分の服は大丈夫なことを確認する
首飾りは遠い昔を閉じ込めた琥珀
海の底にじっと眠った真珠貝の夢見た白い粒
長い髪をまとめ上げたらもう準備は整って

そこにたどり着くための2頭立ての馬車を
今日は18時過ぎに呼んで下さらない

今日も真面目に仕事をしている
2頭の馬が首を垂れて賑やかに笑う人を乗せている
帰ったら腹いっぱい食べさせて休ませてやるからと
馬でさえ耐えることを知っている
いつからそれを覚え込まされて
しっくりと身に着けてしまったのか

大理石の教会にはいつまでも
祈りの声がこだましている
昔からの声が反響を続けて
そこに新しい言葉を乗せて行く人々よ

ステンドグラスから零れ落ちる光は
海辺の方から海の陽ざしを集めて
すっかりと眩しい祝福で

無邪気に生を楽しむ人々
無邪気に後悔を重ねる人々
毎日に潮風を胸に吸い込み
今日の出来事を誰かに話さずにはいられない人よ、人よ
どの場所にいても人の生きざまは
さして変わりはないようだ

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