ねえ、波はどこに帰っていくの?
波が帰っていくお家はあるの?
雲の合間から差し込んだ陽ざしに
照らされて真っ直ぐな銀の道を
ゆっくりと波は帰る
ほっとしたのかな
押し寄せるよりも
帰っていくときの方が穏やかな顔をして
ねえそこには雨は降るの?
大きなお日さまが空に輝いているの?
まだ子供は問うことをやめない
それが子供の仕事だから
問いかけるがまま
口を開くがまま
大人はちょうどいい頃合いを見て
口を紡ぐことを知っている
飲みこんでしまった言葉が
虚ろに胸の中でこだますることを知っている
その場所はごめんよ
大人もきっとわからないんだ
誰も見たことがないから
眠れない頭で思い描いた夜もあったけれど
確からしいこと以外は
大人は勇気が無くて言えなくなっている
確からしいことなんて
この世にあったためしも無いのに
きっと何回も色を重ねた
所々には強い青のアクセント
その空の下にはきっと
波の帰る幸福な家があるに違いない
遠く水平線の向こうを眺める心が
根拠もないのに確信を告げる
だって鴎たちが
そちらの方へと白い翼を大きく広げ
顔を挙げて帰りたがるから
けれどそこまでの羽ばたき支えるだけの
体の力はなくてまた
この港へと空から滑り降りてくる
鴎の一機、一機が
着水して
また届かなかったことの
疲れだけを抱えて
だから厳しい目をしているんだ
八つ当たりに空を
滅茶苦茶に切り刻んでみるんだ
人々はいつから帰っていく波の方に
心を奪われるようになるのだろうか
足元を濡らす波よりも
足元を濡らしたことのあった波の行方を
桜貝をその泡沫に含み
遠くへと引いて去った波の行方を
知っているよ
みんなどこかへと帰りたがっているんだ
思わずにはいられない
幸の住む屋根の下にまたいつかみんなが集うことを