風のささやき

雪の日に

いつまでも電車は来ない
駅のアナウンスだけがその消息を伝えている

「後、20分」

僕はこの駅で待っていなければならない
僕が毎日通うその場所に急ぐために

嘲笑うよね、
何故そんなことにあくせくとして
人は生きているのだろうと

雪は舞っているだけ
ただその重さを感じながら
風が吹いたらそちらの方に
揺れているだけ
そこには何のてらいもなくて

コートの下から
忍び込む寒さに耐えかねて
来ない電車の方を眺めている僕は
無い物ねだりの子供よりも
きっと物分かりが悪い

駅のプラットフォームは
薄っすらとした雪化粧
その上につけられた足跡を
また別の足跡が踏みつけて
新たな足跡が残った
その足跡を
また別の足跡が踏みつける・・・・・

毎日の繰り返しに何か
意味を見つけようとして
人はこの土地を踏み続け
足跡を残そうとして

けれど足跡は後悔に
地団太を踏む自分の足跡に消され
やがては誰かの足跡に
跡形も無く踏みつけられて
何も残らない

そんな透明でやり切れない
誰の物かも分からない足跡を
この街は押し続けられているから
その上を一人歩く時には
やり切れない寂しさを
感じるのかも知れない

「後、10分」

またその場所に急ぐために
あったのかなかったのかも
分からなくなる今日に
微かな足跡を残しに

せめてすべてを
やり直したいと思う者のために
すべての足跡を消してしまうほどに
雪は降って白くこの街を鎮めろ

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