風のささやき

欅の木陰に

最初は大地に顔を出した
小さな双葉であった

その姿を想像できない
欅の大木の木蔭に
木漏れ日のバスを待つ

春に欅は芽吹く
おずおずと目をあける
赤子の眩しさで
風の心地よさにくすぐられ
柔らかな空に手を振る

濃い緑に結び合う夏
木蔭は人を憩わせる学び
焼け焦がす陽ざしを
一枚一枚に受け止める
梅雨の激しい雨粒にも耐え

驚くほどに秋に色づく
自分でも信じられないほど
欲張りな風が
一枚一枚の彩りを欲し
惜しみなく与えよう
散りゆく身に染みた陽ざしの記憶を

冬は身じろぎもせずに耐える
夢の温もりを抱いて
空に憧れて根を深く伸ばす
新たな芽吹きの合図を
心の奥底に聞いている

どれほどの学びに
小さな双葉が
これほど大きくなるのだろう

僕が一枚の葉っぱだとして
陽ざしも空も雲も
雨の冷たさ
風の肌触りも
すべては移り変わる
僕に許された一瞬

一度だけの大切な学びを
けれどどこかへ
急ぎすぎてしまう

欅は学びを繰り返す祈りの形象
だから高い梢を仰ぎ慰められて
ひんやりとした肌に触れ教えを請う

頭上の葉が
激しくざわめいた
また風を感じ
次の学びに身震いしている

欅の大木に教えを請いたくて。Last Updated 2026/05

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