夏の終わりに
横顔は涙で濡れていたのか それとも波しぶき あなたはそれを拭って笑った 午後の陽射し 穏やかな銀色の海原 長い髪は半島へなびく 砂浜は舞台のように あなたの言葉の一つ一つが 潮風に届いた 砂山は波に浚われて 高さを失くしてゆく まるで砂金を探す 丁寧な作業 崩れるものと知って それでも人は 砂山をせっせと積み上げる 入道雲が大きな 空には遠のく夏がある 離れてゆく予感の 潮風が吹いた 陽射しはもう肌を焼かない 流木の小枝で 砂上に書いてみた さようなら 今日への惜別 あなたの顔が曇り 枝を持つ手元を眺めた 座って聞いた 波の音は子守唄のように いつしかあなたにもたれ 目を閉じた 満ち足りた潮騒のとき あの日も遠く 鴎が一羽 沖へ鳴いていた 広い海原で 迷うことを思ってはいなかった日 遠のくあの日の波の音 どうして 砂上にまどろんだままで ずっといられないのだろう 答えのない未練を繰り返す それもきっと自分 夏の終わりに 迷い続ける僕がいる
あの海辺の夏は遠く。Last Updated 2026/08