時計台
色づいた街路樹の葉を散らし 肌を刺す風が 我が物顔に通りを過ぎる 弱い陽射しの午後は 遠ざかる少女の笑いのように 力なくして夕暮れを迎える 街並を錆びに塗る夕日 広場に立つ時計台が 鉛を叩くような鐘で たそがれを告げる この胸に二度と消えない うめくような低音 生活の底を覆いつくす響き 誰もが背中を丸めて 家の扉を固く閉ざした 四角い窓越しに 臆病そうな目が 不安げに外をうかがう 子供が遊んでいた芝生には 体を丸めた鳩が取り残される まだ燃え切らない 夕日の残り火 あがきのように 網膜に焼きつけて あたりはもう 海の底より暗い闇に沈み 廃墟の遺跡のように姿を変える 薄い月の明りを頼りに 夜な夜な石畳の広場に集い 頭を垂れながら人は 溜息や独り言を繰り返す 黒い艶のある髪も いつしか白く染まり 心は光の届かないところへ沈む その嘆きに 耳を傾けることもない レンガ色の時計台は 僕もあなたも震わせる 錆びた低音を鳴らし続ける 重い鉄球を足に 海の底に沈むように 闇は濃さを増し 嘆きさえ圧につぶれる
老いは誰にでも襲いかかって。Last Update 2026/06