おそいかかる獣のような冷たい風が
カサカサとする街路樹を打ち落とし
弱々しい秋の午後が耳にこだまする
少女の笑いのように街を走ると
夕日はやがて街並を血に塗り
その背後へと気を失う
街中につき出す時計台だけが
鉛を叩くような音で
たそがれの時を刻み
誰もいなくなった
広場に立つ僕の胸には
二度と消えない低音が
生活の底の響きとなる
誰も彼もが背中を丸めて
家の扉を固く閉ざした
四角い窓越しには
臆病そうな顔が
血走しる目で表を伺っている
昼間には子供達を遊ばせた
広場の芝生には鳩だけが丸く
風船のように鳴いている
まだ燃え切らない
夕日の残り火だけが
僕の瞳にくすぶり
汚れ曇って色を失う網膜に
最後の色彩を焼き付けている
悲しみに満ちた
あたりはもうすぐ
闇の中に沈む込む
昔に栄えた文明の遺跡のように
廃墟となり黙り込む街
青白い月の光をあびて
地面から突き出す
骨のような大理石の柱
ひび割れた神殿の祭壇には
人々が夜な夜な
亡霊のようにこっそりと這い出し
考え事をする
一人頭を垂れ
時折聞き取れない溜息や
独り言を繰り返しながら
数限りない呪詛の声は
闇にとけこみ
夜風は肌を切り裂くよう
灰色の時計台が
時を刻みこむ低音は
僕にもあなたにもなり響き
あなたの黒い髪も
老いる悲しみに白く染まり
やがて夜明なき夜に
心も沈められる
重い鉄球を足に
底のない海に沈みゆくように
闇だけが濃さを増してゆく
声帯はもう声には震えない