日曜の村で
小さな風との戯れに 青い波紋をたてる湖水 そこからは小道もない 薔薇の咲く日曜の村で 炭を焼く煙を 目指して進む白い小舟は 水と空の青さに挟まれて 動けなくなる 見えない指先に つままれたように 涙をためて青ざめた湖 櫂を下ろして 浸す指先の冷たさに 体の芯が凍る予感で満ちる 木苺にくちばしを赤く 悲しげに騒ぐ野鳥たち 蜜蜂は森に出かけたきり 戻ることをしない 流れてくるのは 石のような古い流木 白鳥の影だけを写し取る水面 せめてものなぐさめに 木の葉を浮かべ あかぎれる手で さざ波をたてる ものうく 黒い獣達が呻きながら さまよう深い森 深い牙の跡をのこす樹々 時間は夕刻に凍りつき 湖水に炎が流れる 晩鐘にも燃え尽きない 暗澹たる日の鮮明な記憶に いつしか持ち上がらない 首をたれて 終わりのない責め苦だけが 激しく胸にねじこむ 黒くなる湖水に やがて表情を失い 石造りの教会のように 闇の帳に閉ざされてゆく
苦しさに動けなくなる場所で。Last Updated 2026/05