風のささやき

冬 天文

冬の景色

初雪や仕事の熱も奪いおり

季語:初雪

荒れる海雪も孤独も呑む波濤

季語:雪

凍空に布団干しおりおねしょした

季語:凍空

初雪や深夜のホーム一人きり

季語:初雪

寒空や手の冷たさで鬼ごっこ

季語:寒空

都会には憂い眼のうつた姫

季語:うつた姫

朝北風(あさきた)やもう少し寝る日曜日

季語:朝北風

初雪に得心する肌痛くあり

季語:初雪

片頬を窪ますビルや冬日燦

季語:冬日燦

冬満月餅つき兎も白き息

季語:冬満月

上気して雪のどっしり動かせり

季語:雪

残る葉の意気地を挫く寒の雨

季語:寒の雨

木枯やおねしょ冷たし目覚める子

季語:木枯

直ぐほどけ眼鏡の縁の街の雪

季語:雪

時止める術を見せてや夜半の雪

季語:雪

冬茜熱に焼かれる子を焼くな

季語:冬茜

冬の風饒舌な子も形無しで

季語:冬の風

陽の中で思い巡らす迷い雪

季語:雪

寒風が海打ち鳴らす凄まじく

季語:寒風

霙れるや村落棚田白き海

季語:霙

靴跡を比べ見るなり雪の街

季語:雪

寒晴れやまた浴びる青有難し

季語:寒晴れ

冬日さす墓地の御霊のなお燃えて

季語:冬日

人混みや染みる寂しさ寒の月

季語:寒の月

吹雪く海鴎追い越す列車から

季語:吹雪く

パパという子も眠りおり寒の月

季語:寒の月

寝過ごすも昨夜のままや雪景色

季語:雪景色

雪の朝季節跨ぎの花屋かな

季語:雪

雪の朝赤き車の誇らしげ

季語:雪

雪白し可憐な唇盗み見る

季語:雪

加湿器や子の咳止めろ冬旱

季語:冬旱

初雪や一夜に街の白さかな

季語:初雪

洗い物燃えているのか冬茜

季語:冬茜

冬晴れや偽りまみれぬ青さあり

季語:冬晴れ

雪は降る子らにこれから何を語らむ

季語:雪

欄干に丸き鳩なり冬茜

季語:冬茜

見たいなと言った子の街今日の雪

季語:雪

残る実は雪の重さに耐えにけり

季語:雪

踏切の警笛溶け行く冬の空

季語:冬の空

トンネルの出口眩しき雪景色

季語:雪景色

来る日の希望が支え枝の雪

季語:雪

冬晴やレールは空の青さかな

季語:冬晴れ

初雪に仕事のほてり鎮められ

季語:初雪

冬茜濡らし切なき百日紅

季語:冬茜

散髪の僕待ち伏せて北の風

季語:北の風

野良猫も恨めしげに鳴き冬の雨

季語:冬の雨

口ごもる言葉を聴くか冬の星

季語:冬の星

湯煙に松とりこぼしたる雪を聞く

季語:雪

一歩ごと壊してまわる牡丹雪

季語:牡丹雪

北風の背の圧泣けとのいじめかな

季語:北風

冬空や切れ目鋭きビルの群れ

季語:冬空

冬空や紙飛行機の自由かな

季語:冬空

一息の暖にも残れず雪淡く

季語:雪

木枯が食い散らかして一葉かな

季語:木枯

北吹くも施無畏印(せむいん)持して石仏

季語:北吹く

狛犬の毛並み濡らしてさす冬日

季語:冬日

初雪を窓辺の影絵と眠る夜

季語:初雪