吉岡メソッド - 仙腸関節調整
ムム、 これは使える!

掲載日:2018.08.19
更新日:2018.09.22

2018年7月に大阪で開催された吉岡メソッドのセミナーに招かれ、 吉岡先生の創出による仙腸関節調整法を学んできた。

その後、実際に自分の治療室で用いてみると、大変有効であることが判ったが、 その効果を他人に伝える方法がないものかと少し思案した。 結果、カイロプラクティックを勉強した人間なら、誰でも一応は知っていると 思われるトンプソン・テクニックで使用するディアフィールドの下肢長比較が、 全身のバランスが整ったことを表す指標になるだろうと考え、 以下の表にまとめてみた。

先月は50例についての集計結果を公表したが、施術数が100例に達したので、改訂版として、以下に記しておく。

吉岡メソッドによる仙腸関節調整結果(100例)
短下肢側
(腹臥位伸展位)
仙骨起立側
(利き足側)
パーセント
(症例数)
23
8
55
14
注:利き足というのはボールを蹴ったりするときに使用する側の足
その反対側は軸足(走り幅跳びなどで踏み切る足の側)となる。

解説(括弧内の数値は改定前の値)

仙腸関節への矯正操作と下肢長比較は、ともに腹臥位で行なった。 創始者の言では座位で施術するほうが有効性が高い由であるが、 時間短縮と、繰り返し寝たり起きたりすることによる患者さんの 負担を増大させないために、この方法を採用した。

また、上の施術例中,右手利きの人は84%(84%)、左手利きの人は8%(8%)、 幼少期に左利きを矯正されて両手利きになっている人は8%(8%)、 合わせて16%(16%)であった。

手に比べて利き足の偏りは少し少ない。
右利き足は78%(64%)、左利き足は22%(36%)であった。足は手ほど複雑な動きをする必要性が 低いとはいえ、前回の結果とは少し異なり、右利き足が全体の3/4に上っている。

気になるパターンとして、左短下肢で右利き足の例が55%(40%)に上り、 他の組み合わせに比べて突出して多い。 これは84%の人が右手利きであることと何らかの関係があるのかもしれない。

さらに、興味深い知見は、利き足側の調整だけで左右の下肢長が均等化した例が33%(38%)あったことである。

軸足側も調整した例は67%(62%)だったが、これらの例でも 殆どの例で、利き足側の調整だけで70%~90%程度の均等化が認められた。 そして利き足側の調整で短下肢側が長くなり, 軸足側の調整によって両下肢長が均等化した例が17%(18%)あった。 これらの事象の意味するところは現時点ではっきりしないが、 追々考えてゆきたい。

さらに、上記の表には含まれていないが、仙骨起き上がり(利き足側)と 仙骨うなずき側(軸足側)を調整しても全く変化が認められない例が6例あった。 これらのうち4例は全く逆の調整をすることで両下肢が均等化したが、 残り2例は他部位の調整(仙骨尖の左シフトとインプラント後の歯茎)を行なって均等化した。

以上、仙骨の傾きを調整して全身のバランスが取れる率は106例中104例で、 実に98%の高率となった。トンプソン・テクニックの有効率40%に比べて 極めて高効率(下記を参照)。あっ、これはあくまでも個人的感想 (サプリメントのTVコマーシャルにおけるエキスキューズそのまま)。


恐るべし、吉岡メソッド!

トンプソン・テクニックとの関連性
かれこれ40年前、筆者がカイロプラクティックを学び始めた頃に 教わったテクニックのひとつがトンプソン・テクニックであった。

教わったとおりにドロップ・テーブルを用いてポジティブ・ディアフィールドの 骨盤を調整しても、セミナーのインストラクターが実践して見せたようには 両下肢長が均等化しない例が多くあり、そのため、このテクニックは殆ど用いることなく 今日に至っている。

このたび、吉岡メソッドで骨盤を調整した結果を集計してみて 気づいたことのひとつに、短下肢側が利き足となっている例では (37%(42%))、それがいわゆるポジティブ・ディアフィールド であるなら、吉岡メソッドとごく近い部位にコンタクトしてドロップするので、 瞬間圧と持続圧との違いはあれ、期せずしてこの術法と同様の効果が 得られるだろう、ということである。

ただし、その出現率は37%(42%)であるゆえ、吉岡メソッドに見られるほどには 両下肢長の均等化が認められないことになる。

トンプソン・テクニックのポジティブ・ディアフィールドのアジャストで 思わしい成績が得られなかったのは、このあたりに要因があるのではないかと、 これを教わってから40年後の現在、目から鱗の落ちる思いである。

そのほか,ガンステッド・テクニックに代表されるごとく、腸骨の PSSにコンタクトしてPI腸骨をアジャストする場合においても、 それが利き足側であるなら、全身がバランスされやすいと思われる。

その他のアジャスト・テクニックにおいても仙骨の起き上がりとうなずきを応用して アジャスト法を変えてみると、これまで以上に好結果が得られるかもしれない。
例えば、ガンステッド・テクニックでは、骨盤のレントゲン分析結果にかかわらず、 利き足側の腸骨をPI腸骨としてアジャストしてみるとか、 SOTならCAT1-2-3のブロック操作を、すべて利き足側を短下肢と見なして ブロックを入れてみるとか、試行してみる価値はあるだろう。
ただし、これを読んで実践なさる場合には、あくまでも自己責任であることを お忘れなく。くれぐれも事故なきよう、慎重に。

なお、吉岡メソッドは骨盤調整に関する限り、筆者がこれまで学んできた さまざまなテクニックの中でも、極めて有効性の高い術法であると実感している。

本サイトをご覧になった治療家諸氏には、ぜひ習得をお勧めする次第である。 このテクニックが広まれば、それだけ救われる患者さんが増えるということであるゆえ。

吉岡メソッド:仙腸関節塾

セミナー受講料は2日間で12万円ということだが、これを高いと言っているようでは将来はありませんぜ。

筆者が若い頃、東京で開催される2日間のセミナー(米国人講師)の受講料が5万円だった。大阪から往復すれば10万円ほどの負担となる。
往復10日間ほどの米国セミナーに出かける場合には、50万円程度を要した。 その間、休業による収入減も考えれば、それ以上の経済負担となる。
それに比べれば、上記の受講料は極めて良心的である。

ついでに云っておくが、カイロプラクティックを習得するためには、時間と金と努力を惜しむな、と書いたことがある。「カイロプラクティックを学ぶには」ところが最近、カイロプラクティックの翻訳テキストが高価だとネット上で文句をつけているのを目にしたことがあるが、何をケチクサイことを言うか、と言いたい。商売のネタを仕入れるのに、たかが数万円をケチッてどうする。他にもっと安価なネタがあるようだが、そのネタも、我らが手間暇かけて翻訳したテキストを元に安手のセミナーを開き、それが今の若手の知識の源になっていることを忘れてもらっては困る。有り難く思うべし。

なお、利き手を考慮した集計結果も以下に記載しておく。

吉岡メソッドによる仙腸関節調整結果(100例)
利き手 短下肢側
(腹臥位伸展位)
仙骨起立側
(利き足側)
パーセント
(症例数)
21
5
49
9
2
3
6
5


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著作権所有(C) 1998-:前田滋(カイロプラクター:大阪・梅田)