カイロプラクティックを学ぶには

1996.10.14~2018.09.15

カイロプラクターを目指している人たちに先ず言っておきたいこと があります。管理人プロフィールのページにも書きましたが、 読み飛ばされるといけないので、何度でもしつこく書きます。

時間、お金、努力、くれぐれも、この三つを ケチらないで下さい。人の健康に関わる仕事です。 一つでもケチると、まともな治療技術は身につきません。

なに?できるだけ早く上手になりたいって?
基本練習を倦まずたゆまず続けないと、技術と言うものは 身につきません。それにはどうしても時間が必要です。 日本人の平均寿命は世界一長いのです。ここはひとつじっくり 腰を落ち着けて、焦らず慌てず取り組んで下さい。 石の上にも三年と言います。

なに?お金がない?
取り敢えず最低限の学費を稼ぐなり、 借金するなりして、工面して下さい。そして何らかの国家資格を 取得して治療の世界に飛び込み、患者さんを治療するセンスを 磨くこと。そして、いま目の前にいる患者さんの苦痛が少しでも 軽くなるように力を尽くす。こうして稼いだ治療代の一部を 自分自身の教育費にまわせば、お金はついてきます。 世間ではこれをスキル・アップとかブラッシュ・アップなんて 言うそうですが、何をしゃらくさい!

管理人のよく知っているアメリカ帰りのDCのドクターは、 先ず日本で鍼灸師の免許を取得し、次に三千万円の借金まで してアメリカのカイロ大学を卒業なさっているのですよ。

管理人自身は按摩・マッサージ・指圧師免許を取得後、 シオカワ・スクール・オブ・カイロプラクティックを卒業し、 すぐに治療院を開業しました。当然最初は閑古鳥が啼いて いましたが、少しずつ患者さんが増えてきて、3年目には ほぼ軌道に乗り、そして4年目が過ぎたとき、振り返ってみると 自己教育費として一年で100万円あまりを費やしていました。

当時を振り返って家人は「あの頃のセミナー代があれば、 家計がずいぶん助かったのにね」などと言っていますので、 これは決して余裕で捻出できた金額ではないのです。

しかし、自分の技術をさらに高めることを最優先し、 高めた技術を患者さんに還元する、と言う姿勢を貫くことで、 お金の問題は解決されました。ちなみに、その後10年間は 毎年ほぼ同額を自己投資に費消しました。

なに?できるだけ楽して上手くなりたい? (シンドイことはしたくない?)
すみません、こんな人はもう面倒見切れませんので、 どうか他の仕事に就くことをお勧めします。 だけど、努力を惜しむ人はどんな仕事についても モノになりませんよ。特に技能職には不向きです。

上記三つのうち一つでもケチると、まともな技術は身につきません。 そしていい加減な技術で治療に当たると、結局は患者さんが 迷惑することになります。この世界を目指すなら、どうかこの三つを ケチる気持を捨てて下さるよう、一人の患者としてお願いします。

カイロプラクターを目指しておられる方たちから質問のメールを多く いただきます。その都度、返事を書いて激励してあげたいのですが、 「ChiropracticinJapan」の全てのページに一通り目を通してから、 さらに質問がありましたら、メールを送って下さい。カイロプラクターを 志すくらいなら、これ位の労力を惜しまないでいただきたいものです。 また、読むに値するだけの内容は書いたつもりです。明らかに一部分 にしか眼を通さずに書かれたと思われるメールには、返事を出しません ので、悪しからず。

それから、「○◎カイロ学院、○×カイロプラクティック・カレッジ というのがありますが、これらの学校の評判はどうなのでしょう?」 などという脳天気なメールも、どうかご勘弁願います。「その学校は 胡散臭いですよ、お止しなさい」なんてことを、たとえ私信といえども 文章として証拠の残る形で、しかも何処の誰とも判らない人に(失礼!) 言える訳がないではありませんか。狭い業界ですので、どんなことで 当の学校に知れるとも限りません。わたしゃこんなことで逆恨みを 買うのはまっぴらゴメンです。この手の返信を書くのに少々疲れました ので、ここで先手を打っておきます。

テクニック上の細かな点や翻訳書の疑問に関する質問も、ご勘弁を。 商売上の技術的なノウハウを無料でお教えするほど、ワタシャお人好し ではありませんし、原著者でないと答えられないような質問に、 単なる翻訳者が答えられる訳がないではアリマセヌカ。商売ネタは、 セミナーに出席するなどして、自腹を切って獲得するベシ。

ところが最近(2018年)、カイロプラクティックのテキストが高いと 文句をつけている人がいますが、ケチクサイことを言ってくれるなと言いたい。 商売のネタを仕入れるのに、たかが数万円をケチッてどうするのですか。 他にもっと安価な本やネタがあるようですが、そのネタも、我らが手間暇かけて 翻訳したテキストを元に安手のセミナーを開き、それが若手のみなさんの 知識の源になっていることを忘れてもらっては困ります。 (この節は2018年9月に追記)

前置きが長くなりました。これ以下が本題です。


1.アメリカ、オーストラリア、英国などの カイロプラクティック大学へ留学する方法

入学資格は最近では大学卒と同等の資格が必要なところが多い。 ただし、次の条件が付加される。

*教養課程の物理学、化学(有機、無機)、生物学、心理学の 単位を取得していること。
*TOEFL550点以上(一般大学では500点以上)

卒業後は、D.C.(Doctor of Chiropractic)の称号が得られる。 もちろん卒業後に州の開業試験に合格すれば、その州で開業できる。

これに要する年数は大学のみで3~4年、大学に入学するための 準備期間(英語の勉強や教養課程の単位を取ったりする)に 3年くらい、あわせて6~7年の年数が必要。

但し、日本国内で開業するには(2)で説明する医療免許が必要です。

2.日本国内で勉強する方法

<<まず医療免許を取得すること>>

日本でカイロプラクティックを業とする場合には、何らかの医療免許 (あんま・マッサージ・指圧師、鍼灸師、柔道整復師、医師免許なら 鬼に金棒)を、まず取得することをお奨めします。というよりこれは、 ほとんど必須条件であるとお考え下さい。これらの学校の修業年限は いずれも3年です(ほとんどが夜間コースを併設している)。

カイロプラクティック関係の掲示板を覗いてみると、この資格論議が 盛んです。『やりたいのはカイロプラクティックなのに、どうして 直接関係のない他の免許を取得する必要があるのか?』という意見が あります。一見もっともな考えですが、

1.日本でカイロプラクティックが免許制になっているなら、なにも わざわざ他の免許資格を取得する必要などありません。しかし、 国内におけるカイロ業界の混迷ぶりをながめていると、日本で カイロプラクティックが免許制になるのは、百年たっても不可能な ようです。あまりにも業界内部での覇権争いがひどくて、業界が 一つに纏まらない、あるいは纏まれないのが原因のようです。

2.したがって、国内でカイロプラクティックを修得しようとすると 便法を取らざるを得ません。

修得の筋道としては、解剖学、生理学、診断学などの基礎医学を 一応終了した上でカイロプラクティックの勉強を始めるべき なのに、現在のカイロプラクター養成校の多くは、基礎医学を しっかり教育しているところはごく少数しかありません。

国内のカイロ養成校で、上記のような基礎医学系の科目において 大学医学部の専門教員を採用している学校は皆無でしょう。 ほとんどが開業または勤務歯科医師や内科医師がこれらの科目を 担当しているようです。

また、充分時間を取って基礎医学を教えている学校では、 カイロプラクティックの技術を教えている時間の余裕がなく、 カイロそのものの履修時間が少ない。そうでない所では、 そもそもカイロプラクティックの技術さえもいい加減な人が 教えている学校が多い。

一方、医療関係の専門学校では医学系の専門講師が基礎医学系の 教鞭を執っています。

なにより、鍼灸師、按摩・マッサージ・指圧師、柔道整復師などの 知識や治療技術がカイロプラクティックを修得するのに邪魔になるとか、 不要だとか言うことは決してありません。鍼灸の基本概念である経絡を 取り入れたカイロプラクティックの治療法(Applied Kinesiology)も あります。

3.日本は腐っても法治国家です。カイロを規制する法律がないとは 言うものの、独立して治療院を構えることのできる医療免許を 取得してからカイロを学ぶ筋道を辿ることが、患者さんに対する モラルであると筆者は考えます。

『国家資格を取得している鍼灸師や按摩マッサージ指圧師、柔道整復師は 資格にあぐらをかいて全く勉強していない。それに対してカイロプラク ティック師は彼ら以上に詳しく勉強している』と言う人もいます。

個々の事例を挙げれば、全く不勉強な医師やその他国家資格保持者も いることでしょう。逆に、それ以上に詳しく勉強している無資格カイロ プラクターもいるでしょう。筆者の周囲にもこのような人は大勢います。 しかし、このような個々の事例、ミクロな話をしていたのでは、大局を 誤ることになります。全体を眺めて下さい。

時間と金のかかる医師免許その他の医療資格を取得していても、問題を 起こす人は必ず出てきます。野放し状態だと、それ以上に問題を起こす 人間が多く出てくるはずです。このような状態では国民全体の健康に 有害になると言わざるを得ません。

現実に、15年ほど前から『カイロの治療を受けたら、痛めつけられて かえって悪化した』と言うような悪評が巷に広まってきています。 勉強不足、修行不足で開業している例や、そもそもいい加減なことを 教えられ、生徒本人はそれが本物だと勘違いしたまま開業している例が 増えている証拠です。

学校をうまく選択すれば、無資格の状態でカイロプラクティックを 勉強し、開業するという方法もないではありませんが、その状態ですと、 現行法規上きわめて不安定な状態となり、せっかく技術を習得しても、 将来の行政の対応によっては、モグリと見なされることにも なりかねません。

大手の一般新聞やインターネットのWEBサイトにおいても、無資格者を 対象として短期間の合宿や講習会を終了すれば、怪しげな協会認定の 資格を与え、あたかもそれが行政公認の資格であるかのような印象を 与えるように説明している所もありますが、要注意です。

私からの忠告としては、決して焦らないことです。早く技術を マスターしたいという気持ちは判りますが、人の健康に関わる仕事を 短期間でマスターできるはずがないと言うことを肝に銘じておいて 下さい。

焦ると、変な学校やセミナーに引っかかり、貴重な時間とお金を ドブに捨てたのと同じことになります。また、技術というものは、 最初に教わる先生が大切です。変な教わり方をすると、後から 正しい教育を受けても、最初の悪い癖が抜けきれず、習得するのに 却って時間がかかったり、最悪の場合には、結局は挫折してしまう 事にもなりかねません。そういう人を大勢知っています。

「自分が死ぬまでにカイロの真髄に迫ればいいや」というくらいの 息の長さが必要です。

あんま・マッサージ・指圧師、鍼灸師、柔道整復師の専門学校一覧は
次のページを参照して下さい。
☆鍼灸整骨総合サイト


<免許取得後にカイロプラクティックを勉強するには>

選択肢1:カイロプラクター養成校に入学する

筆者のお薦めするカイロプラクター養成校を次に挙げておきます。
*ユニバーサル・カイロプラクティック・カレッジ(UCC)
東京都豊島区東池袋1-19-12山の手ビル東館6F
PHONE:03-3986-1297
修業年限:医療免許未取得者=3年、医療免許取得者=2年


選択肢2:時間的、経済的に養成校に通うことができない場合

免許取得後は、しかるべき鍼灸院や接骨院に勤めながら、 日曜日などに開催される各種のセミナーにせっせと出席し、 コツコツと勉強を続けるという方法も可能です。もちろん、 この場合には学校を卒業するよりは一通りのカイロのテクニックを 知るだけでも年数はかかります。また、指導者から厳密な指導を 受けられないと言う不利もあります。

また、この方法は関東地方以外に在住の人には事実上無理です。 何故かというと、日曜日ごとにセミナーが開催されているのは 東京だけなのです。

UCCは無資格者も入学できるようにしてありますが、これは、 世間の風潮がそのようになってしまったので、無資格の カイロプラクター志望者を、いい加減な養成校にゆだねるよりは、 UCCで受け入れて教育した方が良いだろう、という苦肉の策です。 UCCの卒業者は、やはり医療免許を取得しておいた方がよいと 納得する人が多いようで、鍼灸や指圧の専門学校へ入学している ようです。

何度でも書きますが、「日本の法律ではカイロプラクティックを 規制する法律がないから、しっかり勉強さえしていればよい」と いう理屈は判りますが、そういっている養成校が、全くいい加減な ことしか教えていないのです。私も昔カイロプラクティックを 目指したとき、治療を受けた先生から「まず医療免許を取りなさい」 といわれたので、その通りにしました。

急がば回れ、です。技術ばかりを追い回しても基礎をしっかり 勉強していないと、結局は遠回りになります。他の整体校や カイロ養成校の卒業者達は、入学後しばらくして、または卒業する 間際になって自分たちの教わっていることが、とてもいい加減な 内容だということに気づきはするものの、高い授業料を払い込んで しまった行きがかり上、そのまま卒業し、その後は途方くれている、 という状態の人が多いです。中には、UCCに再入学する人もいます。

人様の身体に触れ、健康に寄与したいと希望するからには、 「最低限の医学的な知識を身につけましたよ」ということを 保証するものとして、何らかの医療免許を取得することが、 患者さんに対する最低限の「礼」であり、「モラル」です。 そして、「不完全な人間」が考え出した技ゆえに、現代医学、 鍼灸、カイロプラクティック、その他の手技療法、 全て完全ではありません。自分がいま抱えている患者さんに とって、もっとよい治療手段があるならば、西洋医学も含めて 紹介できるような知識をもっていなければ、また、患者さんに とって最適な治療法は何かと考えながら治療を行う態度が なければ、真の意味での治療師とは言えません。そのためには、 解剖学や生理学の基礎知識は言うに及ばず、症候学や診断学の 基礎的素養が必須となります。

規制されない状態の方が好き勝手なことをやれて、施術者に とっては有利なように思われるかも知れませんが、 「医療行為」というのは、元来が人の身体に対する「侵害行為」 ですので、その施術者(医師や治療師)に対する法的な規制の もとで仕事をしないと、国民にとって有益な医療にはなりません。 現実にカイロプラクティックについては規制がないために、 悪質あるいは乱暴な施術者が増えてきて、社会的な問題に なっているのです。私たちも自分の仕事の社会的な評判が 落ちてきて、エライとばっちりを受けているのです。

無免許で医療過誤を起こし、患者さんから告発されますと、 これは傷害事件として警察が介入する事になり、最悪の場合には、 逮捕、収監という事態になります。そうなると治療師としての 社会的生命は、その時点で絶たれることになります。

厚生省は、医療免許取得者がカイロプラクティックを勉強し 施術に応用することに対しては、何ら問題にしていません。 技術的には、カイロと他の治療法は全く体系が異なるので、 「何であれ医療免許を持っていればカイロを行うのはOK」と いう考えにも疑問符が残りますが、これも「最低限必要な 基礎医学の素養は保証されている」という考えに基づく ものでしょう。

以上、あくまでも「国民の健康と安全を守る」立場から 考えてみて下さい。時間と費用はかかりますが、この観点からは 良いことなのです。アメリカのカイロ大学の入学資格は、 数年前から大学卒業者になっています。このままでは、彼我の レベル差は開いてゆくばかりです。

<カイロプラクティックの免許制度の確立に関して>

免許制に関しては、厚生省はあんま、鍼灸との抱き合わせの形 での免許制ではどうか、と日本カイロプラクティック連絡協議会 (カイロ連)に打診しているようですが、業界側では、あくまでも 単独形式での免許に固執しているようです。しかし、この方法 ですと免許制度の導入にはかなり時間がかかりそうです。

「医療行為」というのは、もともとが人の身体に対する 「侵害行為」ですので、その施術者(医師や治療師)に対する 規制はきついくらいで、ちょうど良いと私は思っています。 施術者の既得権を守るような法体系だと、国民にとっては、 かえって危険なことになります(医師法などでは、 このような部分はないのかしらん?)。

「国民の健康と安全を守るためには、これくらいの規制を 受けるのは当然ですよ。それでも治療行為をやりたいのなら、 充分に研鑽を積んだ上で、注意しておやりなさい。それが 気に入らないなら止めるこった」という法体系が理想です。

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