“アーティスト” ★★
THE ARTIST
(2011年フランス映画)

監督:ミシェル・アザナヴィシウス
脚本:ミシェル・アザナヴィシウス

出演:
ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン、ジェムズ・クロムウェル

 

2012年アカデミー賞受賞作。
本作品がそれ程の作品かどうかは別として、今の時代にサイレント映画の手法を持ち込んだアイデアは面白い。

さてストーリィ。
ジョージ・ヴァレンティンはサイレント映画のヒーロー、大スターとして順風満帆だったが、トーキーの時代が来て彼の状況は一変する。
出番を失い、株式暴落という不運にも見舞われ破産状況。一方、彼の映画に出演したことからチャンスを得た新人女優ペピーは、トーキー時代の到来と時を合せるようにジョージと対照的にスター女優への道を昇り詰めていく。

サイレントからトーキーへの移り変わりは、当時の俳優たちにとっては残酷なものだったろうと思います。チャップリンとバスター・キートンがトーキーによって対照的な道を歩んだことは有名な事実ですし、ミュージカルの傑作「雨に唄えば」はサイレントからトーキへの変遷を背景にした物語でした。また、先日読んだ高峰秀子「わたしの渡世日記」によるとそうした事情は日本映画界でも何ら変わらなかったことが窺えます。

ただ本作品、純粋にサイレント映画ではありません。無声というスタイルを全編通しながら、時によって音声を効果的に使っています。中盤、ジョージがトーキー時代の到来を悪夢で見る場面、これはお見事。
サイレントかトーキーかということに捉われない時代だからこそこう言えます。声がなくても役者は表現、演技ができるのだと。声が無い部分、逆に表情を豊かにして演じることができる、それが肌で感じられるところ、本作品の得難いところではあります。
本作品でいえば新人女優ペピーの溌剌さは、無声だからこそ輝きを放っていたと言えるでしょう。

サイレント映画の手法をもって、サイレントからトーキーへ移り変わる時代の役者の苦悩を描いたという趣向、本作品の魅力はそこにあります。
最後の落としどころはそこに持っていくか!というところが、ミュージカル映画ファンとしては愉快です。

※なお、主演の2人以上に名演技を披露していたのが、ジョージの愛犬。無声映画には何とも似合う演技者と言うべきか。(笑)

2012.04.08

       


  

to 映画note Top     to 最近の映画 Index