“リンカーン” ★★ 監督:スティーヴン・スピルバーグ |
奴隷制廃止、南北戦争に絡んだ米国大統領だけに、ドラマティックな物語が展開されるのだろうと予想していたのですが、ドラマティックはドラマティックでも地味な展開。
本作品においてリンカーンが戦う舞台は米国下院議会。 奴隷制を禁じる合衆国憲法修正第13条の可決を目指し、リンカーン率いる共和党対民主党のしのぎを削る議会闘争が描かれます。 そこに描かれるのは、施政者であるリンカーンの孤高の姿。何の為に彼がこれだけの犠牲を払って奴隷制を廃止しようとしているのか、彼の側にいる者でも全てが理解している訳ではなく、戦争終結を第一に考え民主党、そして南軍との妥協を求める議員もいる。 時には妻メアリーさえもリンカーンの前に批判者として立ち塞がります。 理想の国を作るために苦闘する施政者の何と孤独で、背負った責の重いことか。本作品から強く感じることはそのことです。 ※ちょうど読書中の澤田瞳子「日輪の賦」もまた、国を守るために律令を整備し中央集権国家を確立しようと孤軍奮闘を続ける持統天皇の姿を描いた長編歴史小説。本映画と重なる部分が多くありました。 主演のダニエル・デイ=ルイスが孤独な闘いを続ける大統領エブラハム・リンカーンを演じて名演、またその妻メアリを演じたサリー・フィールドも負けず劣らず名演技です。 しかし、理想だけでは、世俗にまみれた人間は中々動かないもの。最後、自ら反対派議員の切り崩しに動いたリンカーンの姿には迫力が感じられて見応えあり。 2013.04.20 |