“ヒア アフター” ★★☆
HERE AFTER
(2010年アメリカ映画)

監督:クリント・イーストウッド
脚本:ピーター・モーガン
出演:
マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、フランキー&ジョージ・マクラレン

   

題名の「ヒアアフター」とは“来世”のこと。
主人公は3人。東南アジアでバカンスを楽しんでいた時、突然襲ってきた大津波のために臨死体験をした女性ジャーナリストのマリー。霊能力者という能力のおかげで孤独な生き方を強いられている青年ジョージ。そして双子の兄を思いもかけぬ事故で失った少年マーカス。
パリのマリーは、自分が経験した世界のことを明らかにしたいと思いますが、四面楚歌。サンフランシスコのジョージは、自分の霊媒能力から逃れたいと切望していますが、実兄を始め周囲の人々は彼の霊媒能力を放っておいてはくれません。ロンドンのマーカスは、もう一度兄のジェイソンに会いたいと願ってロンドン中を彷徨い歩き続けている。
3者三様、生と死の狭間のことで苦しんでいる訳ですが、誰も彼らを救ってくれはしません。彼らの苦しみには、孤独という苦しみがさらに加わっています。

交わることのない3つのストーリィが、静かに淡々と進んでいきます。
余計な言葉が交わされることはなく、余計な音楽がストーリィを彩ることもありません。3人がひたすら動き、動くことによってストーリィが形作られているようです。
面白い、あるいは感動するといったようなドラマ的展開がある訳でなく、観客は彼らの苦しみをただ眺めているしかない、という風。
しかし、ロンドンで開かれたブックフェアの会場で、偶然に3人は出会います。そこで初めて3人はお互いに救われることができる、というストーリィ。

ストーリィがどうのこうのとか、感動の有る無しとかではなく、作品自体に惹き付けられてしまう作品。
クリント・イーストウッド監督作品の良さを味わうことのできる、典型的な作品のひとつと言えるでしょう。

※なお、主人公の一人ジョージ、孤独な生活を送る彼の唯一といえる楽しみがディケンズというのが、ファンとしては嬉しい。
部屋で一人彼が聴く朗読は、ディケンズの代表作「デイヴィッド・コパフィールド」です。

2011.03.05

        


  

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