“オットーという男 ★★☆
A man called OTTO
(2023年アメリカ映画)

監督:マーク・フォスター
原作:フレドリック・バックマン
脚本:デヴィッド・マギー
出演:トム・ハンクス、マリアナ・トレビーニョ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、レイチェル・ケラー、トルーマン・ハンクス

 

フレデリック・バックマンの世界的ベストセラー「幸せなひとりぼっち」を映画化した、スウェーデン映画のリメイクだそうです。

主人公のオットー(トム・ハンクス)は郊外の住宅街で一人暮らしする男性。
偏屈で頑固者、毎日自宅周辺を回ってはゴミ出しや駐車の仕方について悪態をつき、ルールを守らない住民に注意をしまくっている。
そんなオットーの家の向かい側にある家に引っ越してきたのが、陽気で賑やかな妻マリソルが率いるメキシコ人一家(夫婦、2人の娘)。

実はオットー、愛妻ソーニャに死なれ、仕事も定年退職して孤独な身。
妻の元に行きたいと自殺を試みますが、マリソルたちの騒ぎに巻き込まれたりして、何度も失敗してしまう。この辺りはかなりコミカルな処。

マリソル(マリアナ・トレビーニョ)という身重のメキシコ人女性、その一家が愉快。
何だかんだと騒ぎ立てては遠慮なくオットーの元に押しかけ、自分たちのペースにオットーを巻き込んでしまう。
おかげでオットー、落ち着いて自殺もできず、という具合なのです。

しかし、そのことによってオットーは、妻以外の人間と関わることを思い出し、次第に生きる意味を見出していく、という展開。
そしてことあるごとに、オットーとソーニャの出会いから始まり2人が歩んできた人生が回想として映し出され、彼が如何に妻を大切にしてきたか、妻を失った孤独がどれほど大きいかが描かれます。

でもこのオットー、不機嫌そうにしていても無愛想な態度をとっても、マリソルやその娘たち、隣人、そしてソーニャのかつての教え子らから頼りにされる風なのは、どこか信頼できるところがあると見抜かれているからなのでしょう。

トム・ハンクスの僅かな表情変化によって見せる演技がお見事。
そして、マリアナ・トレビーニョの喜怒哀楽をはっきり示す演技が、それと対照的で楽しめます。

という訳で、演技とストーリィと両方が楽しめる佳作。
なお、若い頃のオットーを演じるのは、トム・ハンクスの息子氏。

※本ストーリィには、ディケンズ「クリスマス・キャロル」や、クリント・イーストウッド「グラン・トリノ」を思い出させられます。

2023.03.10

       


  

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