“じゃじゃ馬ならし 
THE TAMING OF THE SHREW
(1967年アメリカ/イタリア映画)

監督:フランコ・ゼフィレッリ
原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚本:ポール・デーン、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、フランコ・ゼフィレッリ
出演:マイケル・ヨーク、エリザベス・テイラー、リチャード・バートン

    

シェイクスピアじゃじゃ馬ならし」の映画化。
ミュージカル版の「
キス・ミー・ケイト」とは違って、原作に沿った内容の作品になっています。
ただし、それにも関わらず、根幹のところではむしろ「キス・ミー・ケイト」の方が原作に近く、原作に沿った筈の本作品の方が原作の良さを生かしていないという印象を受けます。

原作以上にかなりドタバタ過剰に仕上がっています。その点はまぁ良しとして、問題はペトルーキオの態度、行動振りが中途半端なところ。
これではカタリーナの為を思ってわざと横暴に振舞っているのではなく、単に偉ぶっているだけで意外と場当たり的かつ小心な人物、ということになってしまいます。
「じゃじゃ馬ならし」という劇の魅力は、ペトルーキオの本心をカタリーナが理解して夫と一心同体になる(河合祥一郎「
シェイクスピアの男と女」参照)ところにあるのですが、これではカタリーナとペトルーキオが最後の最後まで張り合った形(カタリーナは従順な振りをして)になってしまう。それではこの劇を、本心から笑い、楽しむことはできなくなってしまうのです。

本作品はリザベス・テイラー(カタリーナ役)、リチャード・バートン(ペトルーキオ役)の共演というところがミソだったのでしょうけれど、かえってその分つまらなくなっているとも言えます。
エリザベス・テイラーに配慮するが故に、ペトルーキオの人物像がやや弱く、その一方でカタリーナが必要以上に強い女性になってしまっているのではないか。
また、二人の存在感の大きさによってビアンカとルーセンショーの組の存在感が薄くなってしまっているところも、2組を対比する面白さがなくなってしまっています。
なお、エリザベス・テイラーはじゃじゃ馬なカタリーナを演じている時の方が合っていて面白い。従順になったカタリーナ、老人をお嬢さんと呼んでユーモアを発揮するカタリーナを演じるエリザベス・テイラーは、全然と言って良いほど似つかわしくない。

2006.05.14

 


 

to 映画note Top     to クラシック映画 Index