“ラストマイル ★★
(2024年日本映画)

監督:塚原あゆ子
脚本:乃木亜紀子
出演:満島ひかり、岡田将生、ディーン・フジオカ、宇野祥平、火野正平、阿部サダヲ、石原さとみ、窪田正孝、市川実日子、薬師丸ひろ子、星野源、麻生久美子

  

世界的大手のショッピングサイト、その巨大な物流センターを舞台にした犯罪サスペンス。

通販のイベント“ブラックフライデー”前夜、上記サイトから宅配された荷物が爆発し、死傷者を出すという事件が連続して発生する。
爆弾はどこで仕掛けられたのか? 
警察が疑いの目を向けたのは、当然にして上記物流センター。刑事たちは配送を止め、センター内を捜査しようとします。
それに対し物流センター側は、そこで働く人間は何も持ち込みができないよう厳重にセキュリティチェックを実施している、配送を止めたら巨額の損害が発生すると主張し、配送を継続しようとします。
そして事件は、物流センターに留まらず、荷物の配送を担っている運送会社にも波及していく・・・。

巨大な物流センターであってもそこで働く 800人くらいの人間はほとんどバイト等で、正社員はほんの僅か。
事件に対応するのは、着任したばかりのセンター長=舟渡エレナ(満島ひかり)と、チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)
果たしてエレナと梨本は、この大危機に爆弾混入の謎を突き止め、物流を守ることができるのか。

もう18年前になりますが、楡周平「ラストワンマイル」という作品があります。大手通販会社に対し、大手運送会社が互角に闘おうとするビジネスストーリー。
それに比べて本ストーリーには、巨大ショッピングサイトを運営する企業・幹部と、その働きバチであるかのように酷使されるセンター作業員、運送業者たち、という構図を感じます。

何と言っても、舟渡エレナを演じる満島ひかりの存在感が凄い。たっぷり見せてくれます。
そして中盤、その舟渡エレナについて、彼女は一体何者なのか?という疑問が生じます。その辺りの緊迫感、満島ひかりの演技、痺れますね〜。

ビジネスの国際化、欧米流にしないと国際的な競争力は持てないとばかりに、効率化、能力主義がまるで流行のように謳われてきましたが、その結果、企業は収益を増やし、経営陣は高報酬を得るようになった一方で、底辺で支える多くの従業員たちはそこから取り残され、実質賃金低下、将来に希望を持てなくなっている、その典型的な姿を描いたストーリーと感じます。

サスペンスものとしても、次々とどんでん返しがあり、観応えある一級の映画作品になっています。お薦め。

※なお、上記「ラストワンマイル」の他に、ふと石持浅海「凪の司祭」を思い出しました。

2024.08.23

                    


  

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